(3)管理職に昇進しない人は40歳前後で給与ピークを迎える

 管理職登用確率が下がるという話をしたが、昨今は、そもそも管理職には興味がないという人も増えている。ジョブ型は職責に応じて処遇するという考え方であり、とくに、これまでの管理職層の年功序列的な給与を是正したいという意図でジョブ型を導入する企業も多い。

 つまり、職責が重いライン管理職とそれ以外の専門職的な人との給与バランスを見直したいということだ。ジョブ型で、ライン管理職は給与水準が上がる方向だろうが、専門職的な人はどうだろうか。

 ここで「専門職的」と表現したことには意味がある。ライン管理職以外の管理職層には、①市場価値においてライン管理職に匹敵する高度専門職、②ファーストラインの管理職傘下にある専門職、③専門性がそれほど高くない専任職が混在する。

 たいていの場合、①のハードルは高く、極めて少数か、特定職種に限られ、②と③は職責の軽重から見て、ライン管理職と同等の処遇を行うことはできない。要するに、高度専門職でない限りは、管理職未満であり、一般社員層の処遇になるということだ。

 管理職登用適齢期を35~40歳と見ると、そのころにはポテンシャル評価の第一段階は終了している。一般社員層の社員については、本人が到達しうる最上位の等級に、すでに昇格していると思われる。誤解を恐れずに言えば、もうそれ以上の昇進昇格は期待できないかもしれない。

 各等級の給与がレンジレートで昇給余地があり、評価成績に応じた習熟昇給が設けられている場合でも、たいていは5年もすれば給与レンジの上限に到達するだろう。つまり、一般社員層であれば、40歳前後から40代半ば、そして、管理職になった人も(2)で見た通り、40代後半には給与ピークに達する可能性が高い。以降は、横バイか、担当業務の状況によっては下降することになる。

出所:筆者が生成AIを使って作成
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 管理職への昇進確率低下、ポストオフ年齢の早期化、給与ピークの早期化と、厳しい話が続いた。

 確かに、社員の処遇という目線では厳しい話ではあるものの、企業の目線では「適所適材」は合理的な施策方針であり、その方向に進んでいくと見てよいだろう。いざ、その段になって慌てることがないように、ぜひともこれらの想定を頭に入れたうえで、自分のキャリアを考えることをお勧めしたい。

藤井 薫(ふじい・かおる)パーソル総合研究所 上席主任研究員 電機メーカーの人事部・経営企画部を経て、総合コンサルティングファームにて20年にわたり人事制度改革を中心としたコンサルティングに従事。その後、タレントマネジメントシステム開発ベンダーに転じ、取締役としてタレントマネジメントシステム事業を統括するとともに傘下のコンサルティング会社の代表を務める。人事専門誌などへの寄稿も多数。 2017年8月パーソル総合研究所に入社、タレントマネジメント事業本部を経て2020年4月より現職。