高等学校の数学

 中学後半から高校になると、もう一つ、別の「数」が登場するようになります。それは「関数」という「数」。

 これは数値ではなくて、そこに数を代入すると、値が出てくる「ハコ」(なので、戦前は「函数」と書きました)英語ではFunction(「機能」の意もある)と呼ばれるベツモノが登場します。

 この「関数概念」が、日本社会に普及していないのが、我が国が国際社会での金融などで、およそ勝ち目がない、本質的な「病」になっていると痛感するのです。

 日本では現在も「経済学部」が文系に位置付けられ、そのOB、OGが証券市場の現場に投入されます。

 しかし、香港やシンガポールでは複素解析などを普通に使い倒す理数人材が持てる能力を振り絞って仕事しています。

 日本の証券パーソンが、最初から勝負の土俵に上がれているのか、はなはだ疑問に思います。

 高等学校以上の日本の数学教育で、実質的に抜け落ちているのが「関数」概念の活用です。

「関数」は「数」といってもタダの数ではない。

「三角関数」「指数関数」「対数関数」の方が、むしろ「1次関数」「2次関数」よりも関数らしさが見えやすい。

 ところが、こういうものを導入していったい何の役に立つのかを学校で 全く教えていない。

 現在の学習指導要領では 数学の微積分では運動学の応用問題を扱えないし、物理の初等力学にも微積分を持ち込んでいけない。

 こんなGHQ愚民化政策を役所も現場もクソマジメに守って、教育が根腐れを起こしている。

 代数方程式では「未知数」を求めます。これは文系でも教えています。

 翻って高校の理系後期、大学教養以上の数学では「未知数」ではなく「未知関数」を求めるのが標準です。

 実際、そのように理解されているでしょうか?

 高専は辛うじてこれを免れているので、日本の産業が何とか持っているようなものです。

「ニュートン方程式」「マックスウェル方程式」「シュレーディンガー方程式」・・・全部「微分方程式」などの関数方程式で、求めるものは「未知関数」。

 ただの「数」ではありません。

 このあたりの話が、例えば東京電力の文系経営陣にもう少し理解されていたなら、2011年3月11日の人災は違う結果になっていたのではないか、と思うのです。

 以下では「微分方程式」の前提となる微積分、特に「積分」を小学生レベルから考えてみます。具体例で示しましょう。

問1(小学生級)自転車で1メートル/毎秒の速度で1時間走りました。合計何キロメートル走ったでしょう?

 グラフと式を用いて説明してください

答案例

1メートル/毎秒 × 1時間
= 1メートル/毎秒 × 3600秒 = 3600メートル = 3.6キロメートル

 図も示しておきましょう。

 3.6キロメートル

 長方形の面積の計算は、一番簡単な「積分」演算に相当します。この事実に注意しておきます。

問2(中学生級)静止状態の自転車を1m/s2の加速度で10秒間加速しました。

 10秒後には秒速何メートルの速度に到達したでしょう?

 図も書いてみてください。

 1次関数の基本例題ですね。日本語の問題が理解できたら正解しか書きようがありません。

答案例

1m/s2 × 10 s   =10m/s    毎秒10メートル

 先ほどと同様、速度と時間の積に相当するのが走行距離にあたりますので、これを図に書いてみると、斜線部の直角三角形の面積が、走行距離にあたるはずです。これを天下りで教えれば、 

(10 m/s×10s )÷2=50m

 こんな答えも得られるわけですね。