
前々回稿「日本の大学が『小学校の算数』を教えなければならない理由」に多数の読者から大きな反響をいただきました。
そこで、ゴールデンウイークに親子、家族で是非考えていただきたい「使える算数」、いや正確にいえば「算数を使いこなせる大人になる」ポイントをお伝えしようと思います。
日本の算数数学教育はいま、かなり厳しい状態にあります。
そもそも終戦後の昭和22(1947)年、「教育基本法」で息の根が止められている。
その根本を理解しないお役人やら、現場の事情で学術に線引きのできないご都合やらで、回復困難な病状を呈している。
しかし、ダメなもののまえでダメを言っても仕方ありません。ダメなものをどう良くしていくかを考えてこそ、価値というものです。
今回は「学校で教えるべき算数・数学とは何か?」どうすれば数理が身につくか、考えてみます。
先に結論を記すなら、「応用問題」がカギになります。
皆さん、中学校を卒業する時、数学で「応用問題」を解きましたか? 高校ではどうですか?
数学の先生に「三角関数って何の役に立つんですか?」と尋ねて、答えに窮する人が大半という統計があるそうですから、生徒や親が答えられなくても無理はありません。
身近な実例を多数挙げ、小中学校でも高校でも算数数学の応用問題を与える、戦前の「算術」と同様のカリキュラムが、この国難を克服するキーポイントと思います。
太平洋戦争以前の日本ではごく普通、戦後も高等専門学校(高専)などでは一貫して採用されてきた「正気の教育」は、抽象的な演算と具体的な問題を密接に結びつけて教えます。
翻って1947年以降、GHQが持ち込んだ現行の制度は「正気の沙汰ではない教育」であることを強調しておきます。
小学校の算数
以下どうか、親子で一緒に読んでいただき、お父さんお母さんも具体的に思い出してみてください。
小学校では「自然数」を習いました。自然数というのは、1、2、3、・・・普通の数のことです。
「0」もありますが そのご利益は小学生にはあまり分からないでしょう。
自然数の計算は、お金の計算など、身近なことに役に立ちます。これはごく普通の大人が誰でも知っている。だから身につく。
小学校ではこのほか「小数」も習いました。
体重「31.5キログラム」「家から2.3キロ」など、やはり身近に使う数字ですね。
また、分数(有理数)も習うのですが、分数は実は意外に日常生活では使わないわけです。
ピザを平等に切り分けたりするのに大事ですが、ケーキ7分の3個、というようなことは言わない。
古代エジプトの数学書「リンドパピルス」では、労働者がパンを平等に分け合う計算が展開されているのですが、現代日本社会は古代エジプトの算術に、少し足りないようです。
さて、第2次世界大戦後、日本の大人の標準は、自然数と小数の計算がどうにかできるけれど、分数になると怪しく、歩合とか百分率も誤った理解をしている人が少なくないというのが実情になってしまっています。
そこでこれらの補習を大学で行って、就職率を上げているというのが実情というのが、前々回稿の話題でした。財務省はそれにかみついた。
小学校の算数で出てくるのは「四則演算」だけ。基本「+」「-」「×」「÷」しか出てきません。
こんなに希薄な内容に、だらだらと6年もかけるから、かえって分からなくなる面もある。
でも義務教育は全国民の分布を考え、その内容を「難しい」と思う子が8割方いなくなるよう平易な側にペースを合わせます。
すると5割強の人にはスローモーに感ぜられる教程とあいなる。
横並びをもって是とする戦後民主主義教育が、出口水準で水準をキープする一線を外されたので、現下の学力崩壊は「教科書墨塗り」によってもたらされた必然と言えるでしょう。