⑬トイレ1(設計:GROUP)
設計者:井上岳+齋藤直紀+中井由梨+棗田久美子 GROUP/主用途:トイレ/階数:平屋建/延床面積:81.27m2/構造:鉄骨造

【設計コンセプト】
万博前の夢洲には、植物や鳥類が棲みつき独自の生態系がつくられていました。そして、夢洲は万博やIRによる利用が決まり、更地になりました。本計画では万博期間中に人間が立ち入れない、夢洲につくられていた生態系がアーカイブされた「夢洲の庭」をつくります。利用者は入口から各個室に入り、出口から出ると、アーカイブされた夢洲の生態系を一望できます。この「夢洲の庭」は万博会場の中で、夢洲の過去現在未来に思いを馳せ、自然と人間の共生のあり方を再考できる場となります。




いかにも意図がありそうな無機的な外観のトイレ。個室の入り口と出口が違っていて、用を足した後は中庭側に出て手を洗うという斬新な構成になっている。筆者は最初、中庭への入り方がわからなくて、しばらく考えてから「そういうことか!」と気づいた。
開幕後、SNSでは「入っているのかいないのかわかりにくい」という声が多く上がった。サインの点灯で筆者はすぐに意味がわかったが(下の写真)、万人に伝えるためには「空き」→「使用中」→「中庭」みたいな照明表示が必要だったのだろうか。
子連れの親が子どもを見失うという指摘もあって、確かにそれはどうしたらよかったのだろうか…。公衆トイレの動線を根本から見直す意欲作なので、建築界として“その先”を考えたくなる。

◎本稿は、建築ネットマガジン「BUNGA NET」に掲載された記事を再編集し、転載したものです。