多くの男にはそれが理解できない(TBSアナウンサーの安住紳一郎氏は「在京の放送界で一番」を自負するパンダファン、という珍しい男である)。

 白浜町は人口約1.9万人。そこに年間約300万人の観光客が訪れる。アドベンチャーワールド入場者数は100万人。パンダは白浜観光でも目玉だったのである。

 けれど、こんなニュースなど、ほんとうはどうでもいいのだ。

 おなじパンダでも、わたしが興味を惹かれたのは、2月4日の「フィンランドがパンダを返還、ウクライナ侵攻が関係?専門家『中国が一番いやなこと』」という記事である(朝日新聞GLOBE+、2025年2月4日)

 その前に知っておきたいことは、パンダを受け入れるのに、レンタル料金を中国に支払っているという事実である。これはあまり知られていないのではないか。

 レンタル料金は、繁殖研究目的のため、雌雄2頭で10年単位、年間100万ドル(約1億4000万円)が標準とされている。

 当然、白浜のアドベンチャーワールドも、上野動物園も支払っているのである。

フィンランドに貸与された理由、返還した理由

 2018年、フィンランド中部のアフタリという人口5200人の小さな町に、2頭のパンダがやってきた。しかし2024年11月、満期まで4年も残して中国に返還した。

 町はパンダを迎えるにあたり、「日本の小学校の体育館の2倍はありそうな巨大なパンダ舎」や「サッカー場より大きい遊び場」を建設したのである。

フィンランド・アフタリのパンダ舎と遊び場(写真:Heikki Saukkomaa/Lehtikuva/共同通信イメージズ)

 そこまでして受け入れたのに、なぜ契約満了前に返還したのか。

 動物園のCEOは「政治的な理由は全くない」とあえて強調する。実際には、「パンダを養うお金の工面ができなかった」というのである。

 コロナ禍で客が減少したこと。ウクライナ戦争の影響でさまざま費用が膨らんだこと。そもそも空調がゆきとどいたパンダ舎の建築費は800万ユーロ(約13億円)もかかっていた。

 さらにその上、パンダの年間レンタル料金やオランダから輸入する竹代など飼育費の合計年150万ユーロ(約2億4000万円)が、町の財政を圧迫した。

 習近平がパンダの派遣を伝えたのは2017年4月。国家主席就任後初の北欧訪問で、フィンランドのロシアからの独立100周年を祝ったという。

 アフタリのパンダ返還に「政治的な理由は全くない」とはいえ、やはり無関係とはいえないだろう。

 パンダの貸与が決まったのは、フィンランドが「一つの中国」を承認したからだともいわれる。