低利で資金を借りられる米国の「法外な特権」
ドルは貿易においても同じくらい重要で、米国のシンクタンク、アトランティック・カウンシルによれば、すべての輸出のインボイス(送り状)のうち54%はドル建てで作成されている。
金融の世界では、このドルの優位性がさらに完全だ。
国をまたぐ貸付・預金の約60%はドル建てで行われており、国際的な債券の発行も70%がドル建てだ。
外国為替の世界では、片方の通貨がドルである取引が全体の88%を占めている。
米国の紙幣も外国で幅広く保有されている。ドルという通貨が広く受け入れられているためだ。
実際、米連邦準備理事会(FRB)によれば、2兆ドル以上発行されている米国紙幣のおよそ半分を外国人が保有している。
ドルに対する外国の需要がこれほどまでに強いことは、米国の資産にプレミアムを埋め込むことになり、米国の資金の借り手がその分だけ低いコストで借りられることを意味している。
これはフランスのかつての大統領ヴァレリー・ジスカールデスタンが米国の「法外な特権」と評したものだ。
これは米国に「制裁」によって他国の金融システムを妨害する力も与える。
しかし、トランプ政権の多くのメンバーは、ドルが基軸通貨として利用されることのコストがその利益を上回っていると主張する。
ドルが不当に強くなり、米国の輸出業者を苦しめているというのだ。
強いドルが米国企業の重荷に
「米ドルに対する需要のおかげで借入金利が抑えられているのは事実だが、その一方で為替市場を歪めることにもなった」
トランプ政権の大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めるスティーブン・ミランは先日の講演でこう述べた。
「このプロセスは、米国の企業や労働者に不当な重荷をもたらしており、米国の製品や労働力の世界市場における競争力を削いでいる」
後編に続く「代替通貨としてはユーロや日本円も力不足、それでも長期的にドル安が進む可能性」
(文中敬称略)