Netflix、SNS、映画……多彩な「入り口づくり」が効果を上げる

 リバティ・メディアは、前オーナーのバーニー・エクレストン時代には消極的だったSNSを積極的に活用することで、F1のプレゼンスを高めている。

「以前は、レースの動画撮影は禁止だったのですが、リバティ・メディアは個人で撮影してSNSにアップすることをOKにしました。あるいは、F1の裏側や人間模様を描いたNetflixのドキュメンタリー『Drive to Survive(栄光のグランプリ)』の制作に協力するなど、いろんな方面からF1の露出を高めてきた。そうした戦略が効果を上げています。

 6月には、F1が全面協力した映画『F1/エフワン』(ブラッド・ピット主演)の公開が控えています。90年代にも、F1がハリウッドに協力したことがあったのですが、そのときは残念ながら、現在のインディーカーの映画になりました(『ドリヴン』、シルベスター・スタローン主演)。今回はF1の映画ということで、私はまだ見ていないのでどういう作品になっているかはわかりませんが、大きな話題になるのではないでしょうか」(小倉氏)

2025年6月公開予定の映画『F1』(右は主演のブラッド・ピット、写真:©Warner Bros/Entertainment Pictures/共同通信イメージズ)

 また、Netflixなどが入り口となり、有料配信であっても、F1ファンの獲得につながっていることも小倉氏は指摘する。

「地上波での放送がないにもかかわらずファンが増えている現状を見ると、入り口が多様であることの効用を感じます。レースを2時間じっくり見るよりも、ネットフリックスで熱い人間ドラマを見たほうが面白いという人もいるでしょうし、DAZNでサッカーを見るついでに、F1を見てみようと思う人もいるかもしれない。

 好きなものにはお金を払う視聴形態が一般的になったこともあり、いろんな選択肢の中にF1があるという状況は、今の時代に合っている面があると感じます」