「誰が勝つかわからない展開」がファンを引き付ける

 とはいえ、人気の底上げは総じて、複合的な要因で起こるものである。小倉氏にその他の要因について聞いた。

「昨年からの混戦状態が、レースを見る価値を高めていると考えられます。ここ10年はメルセデス&ルイス・ハミルトン時代、その後はレッドブル&マックス・フェルスタッペンの時代が続きました。またフェルスタッペンが勝つんでしょ、というレースが続いたわけですが、昨年から、マクラーレン、メルセデス、フェラーリも盛り返しつつあり、誰が勝つかわからない展開になってきた。この混戦もファンを引き付けている要因でしょう」

F1レッドブルのマックス・フェルスタッペン(写真:ロイター=共同通信社)

 2025年は6人のルーキーがF1デビューしており、ドライバーのバラエティーも豊かだ。上は43歳のベテランから、下は18歳の新人まで、ドライバーの個性と顔ぶれを楽しむのも観戦の醍醐味である。

 そして各チームの積極的な新人起用は、来年からの大幅レギュレーション改正を見据えてのものでもあると小倉氏は指摘する。2026年からF1は、100%カーボンニュートラル燃料の使用が義務付けられ、電気エネルギーの比率が高まる。

「2026年から車体が大きく変わります。今より車体が小さくなり、追い抜きがしやすくなるという期待はありますが、開発はこれからなのでどうなるかは未知数です。来季を見据えて、各チーム、若い選手を起用し、彼らの戦いぶりを見ておきたい、チームに慣れさせておきたいという思惑があると考えられます」