「フォード」がF1に帰ってくる背景
自動車レースの最高峰、F1の2023年シーズンが開幕した。3月5日の開幕戦で勝利したのは、去年のチャンピオンチーム、レッドブル・レーシングである。今年も速さと強さを見せつけたレッドブルは、去る2月、今年のマシン「RB19」の発表会をニューヨークで行った。イギリスを本拠地とするレッドブルが、アメリカで新車発表を行うのは初めてのことである。
そしてこの場で、2026年からのレッドブルとフォードとのパートナーシップが発表された。少なくとも2030年まで、フォードはレッドブルと、姉妹チームのアルファタウリに、F1の動力源であるPU(パワーユニット)を提供することになる。
大きな話題をさらったこの発表は、ホンダとレッドブルの提携が2025年で完全終了となることを告げるものでもあった。ホンダは2021年でF1から撤退すると表明したものの、その後も技術支援という形でレッドブルにPUを提供し続けているという、いささかわかりにくい状況が続いているが、これが終わるということだ。
レッドブルが2026年以降に選んだのは、行きつ戻りつするホンダではなく、新パートナーだった。かつて成功をおさめ、2004年にF1を去ったアメリカの自動車メーカー「フォード」がF1に帰ってくる。背景の一つにあるのが、世界で高まるF1人気だ。それを牽引しているのが、「F1不毛の地」ともいわれたアメリカである。
F1の独占的商業権を持つリバティ・メディアが3月1日に発表した2022年決算が、F1の急成長を物語る。
総収入は前年比20%増の25億7300万ドル(約3527億円)で増収増益となり、観客者数は、コロナ前の2019年から36%増の570万人を記録した。2022年に世界各地で行われた22戦のうち、最も観客者数が多かったのはアメリカ・グランプリ(オースティン)で、約44万人。F1人気が低迷しているといわれる日本グランプリでも、3年ぶりの開催とあって、約20万人が訪れた。昨年は世界で累計15.4億人がテレビでF1を視聴し、SNSのフォロアー数も増加している。
【出典】Liberty Media Corporation Reports Fourth Quarter and Year End 2022 Financial Results