ハースと技術提携したトヨタ、ウィリアムズ復帰のコマツの「狙い」

 日本人にとっては日本の自動車メーカーの動向も気になるところだ。

 ホンダは2021年末にF1からの撤退を宣言するも、ホンダ・レーシング(HRC)としての参戦を続け、2026年からの本格復帰を発表している。さらにトヨタも、昨年からF1との関わりを深めている。トヨタの狙いについて、小倉氏はこう解説する。

「昨年の秋、トヨタはハースF1チームとの技術提携を発表しました。ハースは日本人の小松礼雄さんが代表を務める中堅チームで、リアウイングにトヨタのロゴが入っています。F1は走行中に膨大なデータを取って瞬時に現場に送り、戦略判断に活用しています。このあたりの技術支援をトヨタが行っているわけですが、ハースの成績は上向きで、すでに結果が出ていると言えるでしょう。

 ただし、ハースとの提携発表のとき、豊田章男会長は『これはF1復帰ではありません』とスピーチしました。トヨタは世界耐久選手権(WEC)に世界ラリー選手権、国内でもスーパーGT、スーパーフォーミュラとモータースポーツを広くやっているので、さらにF1というのは難しいでしょう。

 しかしそうした中でもトヨタ系の若いドライバーがF1への夢を抱けるように、ということで提携を決めたとも表明しています。実際、トヨタ出身の平川亮選手(TOYOTA GAZOO Racing)が、ハースのフリー走行でドライバーを任されるなど実績を残しています」

2024年10月11日、記者会見でF1シリーズに参戦している米国のレーシングチーム、ハースと業務提携すると発表したトヨタ自動車の豊田章男会長(中央、写真:共同通信社)

 それからもう一つ、建設機械のコマツが2024年からウィリアムズのスポンサーに復帰したことにも小倉氏は注目する。

「1990年代にウィリアムズの重要なパートナーだったコマツが、昨年F1に戻ってきました。車体の脇に『KOMATSU』のロゴが光っています。90年代は、コマツの高い技術力で壊れにくいギアを提供するなど、ウィリアムズの成功を支えてきました。今回の復帰には、自社のブランドをグローバルにアピールする狙いがあると考えられます。F1は、世界中で人気のスポーツになりましたから」

 F1は発祥の地であるヨーロッパのみならず、アメリカでも人気スポーツへと変貌を遂げた。その裏には、2017年にF1の新オーナーとなったリバティ・メディアの巧みなメディア戦略がある。