イラン核開発をめぐるリスクがくすぶる
国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は23日「中国の動向が主因となり、需要拡大は鈍化している。予期せぬ事態がなければ、原油価格には引き続き下押し圧力がかかるだろう」との見解を示した。
ビロル氏が指摘した「予期せぬ事態」とは核開発を巡る米国とイランとの間の対立だ。
米国とイランは19日、イタリアのローマで4時間にわたって会談し、核合意に向けた枠組みづくりに着手することで合意した。
両国は26日に3回目の高官協議を開くことで合意している。
だが、両国の交渉は一筋縄ではいかない感がある。

米財務省は22日、イラン産の液化石油ガス(LPG)を輸出している実業家のエマムジョメ氏らに新たな制裁を発動した。同氏が販売したLPGがイランにとって主要な収入源になっているというのがその理由だ。
イラン側は「善意の欠如だ」と反発しているが、米国との交渉は続ける意向だ。
イスラエルのイラン核施設攻撃のリスクも残っているが、中東地域の地政学リスクの価格引き上げ効果は弱まりつつある。
原油価格の低迷が産油国の経済に暗い影を投げかけている。
国際通貨基金(IMF)は22日、サウジアラビアの今年の経済成長率を1月時点の3.3%から3%に下方修正した。
ロシア政府は21日「(代表的な油種である)ウラル原油の今年の平均価格を1バレル=56ドルとなる」と予測し、22日には「今年の石油・ガス輸出収入は前年比15%減の2003億ドル(約28兆6000億円)になる」との見通しを示した。
ロシア経済は原油相場の急落以前から既に減速しており、原油価格がさらに下落すれば、ウクライナでの軍事作戦の中止に追い込まれる可能性は排除できなくなっている。
トランプ氏の原油市場に及ぼす影響力は依然として健在だ。23日に「中国との緊張緩和が近く実現する」との認識を示すと、市場は「買い」材料と判断した。
注目すべきは、アジア諸国がトランプ政権の相互関税の引き上げを回避するため、エネルギーの輸入拡大を通じて米国の貿易赤字削減に協力する動きを活発化させていることだ。