藤井聡太竜王・名人(写真:共同通信社)
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藤井聡太竜王・名人の活躍もあって、根強い将棋ブームが続いています。藤井竜王・名人は5年連続で最優秀棋士賞を受賞し、この4月21日にはその表彰式も行われました。藤井竜王・名人は現在、7つのタイトルを持つ「七冠」ですが、2023年には「八冠」を達成し、タイトルを総なめにしていました。では、将棋界のタイトルにはどんなものがあるのでしょうか。知っているようで知らない「八冠」をやさしく解説します。

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藤井竜王・名人の強さはケタ外れ

 第52回将棋大賞の表彰式が行われたのは、東京・渋谷の日本将棋会館です。藤井竜王・名人の最優秀棋士賞は5年連続。これは羽生善治・現九段による5年連続(2007~2011年度)に並ぶ史上最多タイという偉業でした。

 藤井竜王・名人は表彰式後、「とても光栄」とコメント。そのうえで「昨年度を振り返ると、試行錯誤の1年だった。敗れた対局は完敗も多かった。全体的に内容を底上げして、一方的な展開にならないことを今年度は意識していければ」と語りました。

 直接の言及は避けていますが、2024年6月に「叡王(えいおう)」のタイトルを失い、八冠から七冠になったことへの悔しさがにじむ内容でした。

 藤井竜王・名人は2020年7月に17歳11カ月で棋聖戦を制し、史上最年少で初のタイトルを獲得しました。史上最年少でのタイトル獲得という記録の更新は30年ぶり。一気に「藤井聡太ブーム」を巻き起こし、将棋ファンを超えた人気は社会現象にもなりました。

 その後、2023年6月には史上最年少で「名人」を獲得し、同10月には史上初の八冠独占を達成。若さと優しそうな言動も相まって知名度は急上昇を続け、その名を知らない人はほとんどいないのではないかと思わせるほどです。

 ところが、昨年6月の叡王戦で藤井竜王・名人は「叡王」の防衛に失敗し、初失冠となって七冠に後退しました。八冠の保持期間は254日間でした。さらに、叡王のタイトル奪還を懸けた今年の叡王戦では、本戦トーナメント準決勝で糸谷哲郎八段に100手で敗北。現在の伊藤匠叡王への挑戦権を得られず、本年度中に八冠へ復帰する道が閉ざされたのです。

 そうは言っても、藤井竜王・名人の強さは今もケタ外れです。8大タイトルの最高位とされる「竜王」のほかに、「名人」「王位」「王座」「棋王」「王将」「棋聖」という7つのタイトル保持者です。

 では、これに「叡王」を加えた八冠とは、それぞれどんなタイトルなのでしょうか。歴史や将棋界での位置付けを交えながら見ていきましょう。