本当の標的は、ハイアット一族の理事長か

 トランプ氏はなぜこれほどハーバード大を目の敵にするのか。

 政治サイト「デイリー・ビースト」は、トランプ氏の本心は、反知性主義でも反ユダヤ主義の駆逐でもなく、個人的な怨念にあると指摘している。

4月26日付、お詫びと修正:「デイリー・ビースト」がタッカー・カールソン氏による創設との記述がありましたが、事実ではありませんでした。お詫びします。タッカー・カールソン氏の名前を削除する修正を行いました)

 同サイトによれば、狙いは同大学の理事長を務めているペニー・プリツカー氏(65)だという。

 同氏は大手ホテルチェ―ン、ハイアット関連の投資・不動産グループの会長を務めている。2013年から17年までオバマ政権で商務長官を務めた。

 2028年の民主党大統領候補の下馬評に上がっているJ・B・プリツカー・イリノイ州知事(60)はペニー氏の実弟である。

 トランプ氏は1970年代、ニューヨークのコモドア・ホテルを格上げしてグランド・ハイアット・ニューヨークにするプロジェクトでペニー氏の伯父ジェイ・プリツカー氏とパートナーとなった。

 その後、ニューヨーク市の会計検査が入り、高額の所得税を払うことになった。その際、プリツカー氏はトランプ氏の足元を見て不当な額を押し付けたことがあったというのだ。

 その後、プリツカー氏が同ホテルを全面的に買収した際に、トランプ氏による財政上の義務不履行を理由に損害賠償を請求するなど、トランプ氏は散々な目に遭った。

 そのことをトランプ氏は根に持ち、大統領になった今、ペニー氏が理事長を務めるハーバード大にいちゃもんをつけているというのである。

Trump’s Bitter Personal Feud With Pritzker Family Is Behind His Harvard Hate Campaign 

 トランプ氏にしてみれば、過去の屈辱を晴らす上でも、ペニー氏が理事長として君臨するハーバードいじめは何事にも代えがたい快感なのかもしれない。

 そんなトランプ氏の恩讐など露知らぬハーバード大の顧問弁護士たちは、トランプ政権の対応についてこうコメントしている。

「トランプ政権がやろうとしていることは、研究機関への研究助成金を規定する連邦法を破っていることは明白だ」

「大学キャンパスで反ユダヤ主義を取り締まることと、研究助成金を凍結することとの間には何の関連性もない」

「問題解決のために奥の手を使ったとしか言いようがない」

Harvard Sues Trump Over Funding Freeze

「関税」も「助成金凍結」も手口は「恫喝」

 トランプ氏の手口は、貿易相手国との間の赤字解消を単純計算で解決しようとする「関税外交」の「恫喝」そのものだ。

 大学には研究助成金の凍結という形で適用したようなもの。

 ハーバード大卒業生で元国務省高官、P氏は「トランプ・ハーバード戦争」の行方をこう見る。

「こればかりはどうなるか誰も予想できない。ただ、関税交渉でもそうだが、トランプ氏はそれまで言っていたことを急に変える」

「助成金凍結もトランプ氏が恨みつらみから仕掛けているいくつもの報復戦争の一つ。米国をトランプ流ファシスト国家に塗り替えようとする戦争の一つに過ぎない」

「今のところうまくいっているように見える。裁判所ですらストップできずにいる。議会の共和党が勇気を出して止めに入れるか」

「こればかりは神様しかトランプ氏を止められないのかもしれない」