不動産市況も背景か、アマゾン「プロジェクトは現在協議中」
今回の大規模拡張計画の検討は、アマゾンがパンデミック時の過剰投資を経て、その後抑制していた物流インフラへの投資を、再び積極化させる可能性を示唆するものとなる。背景には、産業用不動産市場の軟化もあると指摘される。不動産サービス大手の米ジョーンズラングラサール(JLL)によると、新規供給の増加と需要の鈍化により、米国の産業用不動産の空室率は2014年以来の高水準に上昇している。アマゾンは、これを有利な条件で拠点を確保できる好機と捉えている可能性がある。
英ロイター通信によると、アマゾンの広報担当者は、「プロジェクトは現在協議中であり、最終決定はされていない」と説明。「資本パートナーとの会議は定例的で、通常のデューデリジェンス(適正評価手続き)の一部だ」と述べ、計画が初期段階であることを示唆した。
トランプ関税懸念? 中国製品キャンセル報道も
一方、ブルームバーグ通信は2025年4月9日、アマゾンが中国や他のアジア諸国で製造された製品の発注を、事前の警告なしにキャンセルしたとも報じている。納入業者は、キャンセルのタイミングからトランプ米大統領の関税政策への対応ではないかとみている。アマゾンはこの件に関するコメントの要請に応じていない。
米中間の貿易摩擦は再び激化の様相を見せており、世界経済への影響や景気後退への懸念も広がっている。アマゾンの倉庫拡張計画の検討は米政府の相互関税発表前に始まったとみられるが、今後の関税政策の動向が、計画の実行可能性(フィージビリティ)やサプライチェーン(供給網)戦略に影響を与えることは必至と指摘されている。
アマゾンはパンデミック時に急拡大させた物流網の効率化を進める一方、近年はクラウドサービス事業「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」やAI(人工知能)分野への投資に軸足を移していた。今回の倉庫拡張計画の検討が事実であれば、物流網への大規模投資を再開し、配送スピードの向上やサービス地域の拡大を一層推し進める狙いがあるとみられる。資本パートナーとの連携を通じて、財務負担を抑えながら一層の成長を追求する新たなモデルを模索している可能性もある。不安定な国際貿易環境への対応が、今後の計画実現に向けた課題となりそうだ。