どうなる「札幌ドーム」?

 対照的なのは、現在はネーミングライツによって「大和ハウスプレミストドーム」と呼ばれるかつての日本ハムの本拠地だ。札幌市の第三セクター「札幌ドーム」によると、25年3月期の最終損益は2400万円の黒字と前期の6億5100万円の赤字からは改善したものの、収益性が高いコンサートなどが伸び悩み、平日も日本ハムのナイターゲームを失った穴埋めに苦戦が続く。

 市は、引き続き大規模イベント誘致や、平日利用の促進などを目指すが、同ドームを本拠地にするプロサッカー、コンサドーレ札幌が9年ぶりにJ2に降格したことによる観客動員への懸念も広がる。

 近年のスタジアムが周辺と一体化することで、「試合以外での来場者の増加」と試合がある日も「滞留時間の増加」につながる仕掛けを工夫しているのに対し、ドームはイベント招致という従来の集客に活路を見いだす。同じ北海道にありながら、目指すベクトルが対照的な両者の明暗をくっきりと浮かび上がらせている。

 上林氏は「ドームは住民にとっても、『イベントがなければ行かない場所』とのイメージが定着しているが、厳冬の札幌にある唯一の屋内大空間という利点は大きい。市民を巻き込んでどう利用方法の活発な議論が急がれる」と話している。

田中 充(たなか・みつる) 尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授
1978年京都府生まれ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了。産経新聞社を経て現職。専門はスポーツメディア論。プロ野球や米大リーグ、フィギュアスケートなどを取材し、子どもたちのスポーツ環境に関する報道もライフワーク。著書に「羽生結弦の肖像」(山と渓谷社)、共著に「スポーツをしない子どもたち」(扶桑社新書)など。