印象的な初期作品

日本では近年になって、藤田嗣治の回顧展が相次いで開催されている。代表的なものでは「生誕120年 藤田嗣治展」(2006年)、「没後40年 レオナール・フジタ展」(2008年)、「レオナール・フジタとモデルたち」(2016年)、「没後50年 藤田嗣治展」(2018年)。
SOMPO美術館で開幕した「藤田嗣治 7つの情熱」は、藤田研究・鑑定の第一人者として知られるシルヴィー・ビュイッソン氏が監修を担当。藤田の創作活動を「自己表現」「風景」「前衛」「東方と西方」「女性」「子ども」「天国と天使」という7つのテーマで読み解いていく構成だ。
これが見どころに満ちた展覧会。まず、出品作自体に惹かれる。主だった藤田展にはほぼ足を運んでいるが、「初めて見る藤田作品」が何枚もある。特に1917年頃、藤田が初個展を開催し、スターダムを駆け上がっていく時期の作品がいい。
《愛するカップル》(1917年、個人蔵)は、藤田の友人であるアメデア・モディリアーニと恋人ジャンヌ・エビュテルヌをモデルにした作品。2人の手は柔らかく絡み合い、もう片方の手は肩越しにそっと触れ合っている。2人の顔は無表情ともいえるくらいにデフォルメされているが、その仕草から深い愛情が伝わってくる素敵な一枚だ。
《シーソー》(1918年、個人蔵)は6人の女性がシーソーに座り、バランスを取りつつ戯れている場面を描いた作品。以前、日本で開催された「生誕120年 藤田嗣治展」には“4人乗りバージョン”が出品されていた。お気に入りの画題なのだろうか。藤田はシーソーを使って、「日本と西洋との間でバランスを取る自分の姿を表現したのかもしれない」と想像した。