盆と正月が一緒に来た、あの銘柄
栫井:世界同時株安の影響で下がってはいますが、例えば三菱重工は3月に上場来高値を付けました。いわば、盆と正月が一緒に来た状態でした。
国産ジェット旅客機のMRJの開発中止など不採算部門の統廃合を進めた一方、経営資源を火力発電所用のガスタービンに集中しました。ガス火力は石炭火力よりは低炭素であり、かつ安定電源です。北米を中心にAIやデータセンターへの電力需要が高まる中、三菱重工はガスタービンの世界市場で存在感を示しています。
日本政府の防衛費拡大も追い風になっています。元々は業績不振から割安銘柄の代表格でしたが、割安感を解消しようと還元にも積極的でした。この3要素が今の株高につながっています。
——死角はないのでしょうか。
栫井:ものごとには必ず表裏があります。三菱重工には、世界的にAI投資の失速があれば、電力需要、ひいてはガスタービン需要も減るリスクもあります。膨張しがちな組織でもあることにも注意が必要です。
——三菱重工は時価総額が大きい大型銘柄で、個人投資家にも人気があります。ただ、個人投資家の中には時価総額が比較的小さい中小型銘柄を好む層もいます。
栫井:中小型株の特徴は、業績や株価の動きが激しいことです。「半導体」などの流行のテーマに乗って急上昇する銘柄もありますが、調整局面で新たな株主が現れない可能性があります。話題になっている銘柄だからという理由だけで買っても、長期投資としてのうまみはあまり残っていない可能性があります。
銘柄の良し悪しについては、結局、企業業績、ビジネスモデル、経営者の考え方などを自分で調べて判断することが重要です。企業を自分で見極められない銘柄には、長期投資家としては手を出してはいけません。
>>後編:「結局、素人はインデックスで積立が最強?」トランプ関税ショックでオルカンやS&P500に痛手、長期投資の心構えとは
※個別の金融商品や銘柄を勧めるものではありません。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。