市場は「より馬鹿理論」で動いている

栫井:投資の世界には「より馬鹿理論(Greater Fool Theory)」と呼ばれる考え方があります。ある資産が適正価値を越えていても、「より高い価格で買う人(=より馬鹿)がいるはずだ」と考えて購入する人がいます。そしてその人も、さらに高く買ってくれる誰かに売ろうとする。こうして資産価格が上昇し続ける現象のことです。

——「より馬鹿理論」の下ではどのような事態が起きるのでしょうか。

栫井:市場参加者がある銘柄について、SNS(交流サイト)を通じて「絶好調」「株価は伸びる」などと宣伝することは珍しくありません。そこへ初心者の投資家が参加すると、銘柄をもてはやす声に誘惑されて、つい買ってしまう。しかし、その時には株価はピークに達しており、もはや市場にその値段で買いたいという投資家は不在、という状況に陥ってしまうのです。

——そのような事態に陥らないためには何が必要でしょうか。

栫井:「悪い企業」を見抜けるようになることが大切です。著書の中では、「悪い株を見抜く10のチェックポイント」を紹介しています。たとえば、長い間利益が増えていない企業は、成長力が乏しいと考えられます。また、業績が大きく上下する銘柄は、先が読めず、急落するリスクもあります。こういった悪いポイントに該当する銘柄を避ければ、必然的に「良い銘柄」に投資できる確率が上がります。

——著書では「上がった株はいつ売却すべきですか」「不祥事は買いですか」といった、誰もが知りたいと思う質問に対して、投資初心者の会社員・波野衿人、ひばり投資診療所所長の忌部あかりといったキャラクターが登場する小説仕立てのストーリーを展開した後、栫井さんが投資への考えを解説しています。

栫井:長期投資への考えを、一問一答で説明するだけではなく、投資家の背景事情まで踏まえて示したいと考えたからです。ストーリーとして紹介することで、理論のみの解説ではニュアンスを伝えにくいポイントも説明できるのではと考えました。

 解説部分では、今お伝えした「より馬鹿理論」だけではなく、証券会社やこれまでの経験を踏まえた機関投資家の思考回路なども字数を割いて説明しています。著書で取り上げている問いは、オンラインサロンや動画コメントで頻繁に聞かれる質問です。

——オンラインサロンや動画でさまざまな個別銘柄を分析していますが、栫井さんが最近注目している銘柄を教えてください。