ストーリーを絶やさないための工夫

 企業が大きくなったり創業者が社内から去ってしまったりすると、顧客への伝達が危うくなります。

 そのため社内でストーリーを発信し続けるために専門の役職を置くことも増えています。それが「ストーリーテラー」と言われるポジションです。

 ナイキには1990年代からCSO(Chief Storytelling Officer)が存在していました。マイクロソフトでもかつてはChief Storytellerの役職を置き、マイクロソフトがどのような企業であるか、そしてそのテクノロジーと人材が世界にどのような影響を与えているかを発信する支援をしています。

 これもブランドの価値を伝えることをいかに大切にしているかがわかる例です。

「創業者の世界観」がストーリーを通して社員に伝わったとき、それは「ブランド・コンセプト」に変わります。それが今度はストーリーを通じて顧客に伝わると「ブランド・イメージ」になります。ブランド・コンセプトやブランド・イメージという言葉は、一般的に使われている言葉です。

 本質と関係ないところで考えられたコンセプトやイメージは単に表面的なものにすぎません。ブランドにとって広告のクリエイティブやロゴ、そしてタグラインなどは非常に重要なのですが、それがブランドの本質たる創業者の世界観を反映していなければ、ブランドの強さである心の絆を作ることができないのです。

 社員や顧客を通り越して広告のイメージだけで社会にアピールしようとしても本当の成果は期待できません。