日本は対米「自立」より「自律」を目指せ

──今年1月に、自民党の森山裕、公明党の西田実両幹事長が訪中し、中国共産党幹部らと面会していた。

長島:中国との関係維持のためには、与党交流協議会のチャンネルを活発化させることで対応できます。

 まずは、与党交流協議会をうまく使って状況をマネージしながら、中国側の課題解決に向けた努力の姿勢を見極めていく。そのうちに、アメリカの中国に対するスタンスが決まる。そういう中で、日本は自国の立ち位置を決めていけばいいのです。

──長島補佐官は今年1月末から、政府特使として中央アジア5カ国を訪問していた。たとえばタジキスタンの国会議事堂は中国が建てるなど、経済的には中国、政治的にはロシアの影響を強く受けている地域とされる。

長島:中央アジア訪問では、大統領や閣僚など様々な方々と面会しましたが、やはり日本にもう少し積極的に関与してほしいという思いを持たれていましたね。

 中央アジアの中には、国民所得のレベルも差があり、資源のある国とそうでない国もあります。対中債務がかなり増大している国もあります。そうしたことに対する懸念も当然ある。

 最近は中東諸国やインドも中央アジアに接近していますが、日本としても地政戦略的に関与していくことは重要で、我々が意識している以上に日本に対する期待や信頼感は大きいと感じました。

──流動性の高い国際情勢だが、日本の今後の外交戦略は?

長島:日本外交の「自律性」(主体的に可動域を拡大すること)を高めることに主眼を置くべきだと考えています。

 それは、ナショナリズムに基づく「対米自立」とは異なります。そのような古典的な「自立論」はアメリカの無用な反発を招き、孤立への道に繋がりかねない。

 私が提唱する「自律論」は、日米同盟を強化する過程を通じて地力をつけた上で、仲間を増やして、自律性を高めていくこと。アメリカとの同盟関係を基盤にしながらも、反撃能力やサイバー防御力といった地力を磨き、国際情勢を俯瞰しながら同志国との連携を深め、日本が主体的に動ける領域を少しでも増やしていくことが重要です。決して日米同盟を弱めたり、日米が反発し合うものではありません。

ながしま・あきひさ 1962年2月17日生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、米国ジョンズ・ホプキンス大学大学院修了。米国外交問題評議会上席研究員などを経て、2003年の衆院選で初当選。現在、当選8回。内閣総理大臣補佐官(外交・安全保障担当)や防衛副大臣を歴任後、2024年10月に石破内閣で再び内閣総理大臣補佐官に就任し、国家安全保障に関する重要政策及び核軍縮・不拡散問題を担当。