ダダ漏れ状態の水道管

 形骸化は、2018年改正から数年しか経っていない水道法でも起きている。石木ダムはそのことを示す一例だ。

 全国における人口減少や節水機器の普及で、家庭での一人当たりの水使用量は、2000年をピークに減少している。水道法の改正は、2065年には水使用量が4割減少すること、施設の老朽化により年間2万件を超える漏水・破損事故が発生していたこと、耐用年数を超えた水道管路の割合が増え、全管路の更新に130年以上かかること、耐震適合率も4割程度で、大規模災害時には断水が長期化するリスクが高いことなどを背景に行われた。

 第1条から「水道を計画的に整備」を削除し、「水道の基盤を強化する」ことを加えた。つまり新たな整備ではなく、今ある施設の維持管理を優先させる政策への転換だった。

 ところが、佐世保市のようにその政策変更が浸透しない自治体がある。給水人口は2009年から2023年までに13%も減った。石木ダム完成予定の2032年までにはさらに減る。給水による収益も減ることは市の資料(下図)でも必至だ。

【グラフ】佐世保市の給水人口(出典:2024年12月20日 第1回検討委資料<本編>2

 そして、実は、佐世保市における一日最大給水量は、2023年実績で7万m3/日だが、漏水などで水道料金を徴取できない「無効水量」を差し引いた「有収水量」は5万7000m3/日しかない。ダダ漏れ状態だ。

 40年を超える老朽管の割合は既に36%超で、漏水件数は年500件(過去10年平均)。2043年には漏水件数は年間900件に増加すると市は見積もっている。経年化率(法定耐用年数を経過した管路延長÷管路延長×100)は7、8割を超える(下図)。現在の更新ペース(年7~10kmずつ)を、この10年で上げなければ、やがて対応できなくなる。

【図】経年化管路の推移(出典:2024年12月20日第1回検討委資料<本編>2

 ところが、市は「有収水量」が2043年に6万7000m3/日に増加する(下図)と楽観。その上で、一日最大給水量は11万m3/日になるという過大な予測を立てて、石木ダムが必要だという。現在の有収水量の倍である。

 この過大予測を、市水道局は「潜在的需要」と呼ぶ。現在、地下水を利用している事業所が地下水利用をやめて水道水に切り替えた場合の給水量と、市水道を利用している米軍の過去最大の給水量を積み上げたものだ。架空の予測だ。

【グラフ】有収水量の実績と推計(出典:2025年1月21日第2回検討委資料