デール・カーネギーの名言も魅力的
6歳の子どもに説明できなければ、自分でも理解していない。
If you can’t explain it to a six-year old, you don’t understand it yourself.
この名言の朗読を聴くと、前半は一気に言って、途中で少しポーズを入れ、後半はゆったりと“don’t understand”を強めに言っている。前半では“six-year old”が大事なので強調し、最初の“s”の音をはっきり言う。“six”は日本語のカタカナ読みの「シックス」とはかなり違い、“x”の後に母音の「ウ」はない。2回出てくる“it”は、ごく軽くなっていることも聴き取って真似てほしい。
学生とは、あなたが満たすべき容器ではなく、あなたが照らすべきたいまつである
Student is not a container you have to fill but a torch you have to light up.
この名言の朗読は、ゆったりとしたリズムで始めている。前半は“fill”まで続け、少しポーズを入れた後に、後半では“torch”をはっきり言っている。その後の“you have to”の3語と“light up”の2語を、それぞれつなげて発音する。この文では、後半が重要なメッセージなので、特にtorchを意識して際立たせて発音の練習をするといいだろう。
人生は自転車に乗っているようなものだ。バランスを保つには、動き続けなければならない。
Life is like riding a bicycle. To keep your balance, you must keep moving.
この朗読は、軽妙なリズムと、間の取り方が特徴的である。前半は、日本人が苦手なLとRがならぶので、注意深く聴き取りたい。後半の“to keep your balance”は音のつながりと流れに注意してリズム良く一気に言い、最後は印象に残るようにゆったりと終わる。LとRの発音は、インターネット上で“Land R, pronunciation”と検索すると、口と舌の動きや2つの音の違いの解説が多くあるので役立ててほしい。
アインシュタインの言葉はどれも魅力的なので、実際に動画を視聴して味わっていただきたい。きっと、自分の気持ちにぴったりと響く名言が見つかると思う。
さらに、ビジネス書の古典『人を動かす』を書いたデール・カーネギーの名言も、わかりやすい英語で深い意味を伝えていて「聴き音読」に適している。YouTubeで”Dale Carnegie”と”Quotes”で検索すると動画が複数ある。
カーネギーの『人を動かす』『道は開ける』の英語の原作は、世界でも有数の歴史的大ベストセラーであり、今日に至るまで広く読まれ続けている。原作の全文を読むのは簡単ではないが、彼の名言を「聴き音読」の素材にすると、短時間で、この古典の重要なメッセージを英語で味わうことができる。

ぜひ本書を読んで発音や聴き音読の詳しい練習方法を知り、さらに実際に動画を視聴して、気に入った名言を見つけてほしい。楽しく「聴き音読」をすれば、聴きやすい発音を身につけ、英語を話すことに自信を持ち、さらにリスニング力を伸ばせるだろう。
瀧野みゆき(たきの・みゆき)
社会言語学者
東京生まれ、慶應義塾大学文学部卒。2016年、英国・サウサンプトン大学応用言語学博士。アップルコンピュータなどで仕事で英語を使う経験を重ねた後、イギリスに16年在住、その間イギリスの英語教授法等を学ぶ。現在は東京大学教養学部、慶應義塾大学ビジネス・スクールなどで、社会や仕事で「使うための英語」を教える。MBA Marketing/MA International Studies(米国・ペンシルベニア大学)、MA Management of Language Learning(英国・グリニッジ大学)、PhD Applied Linguistics(英国・サウサンプトン大学)。社会言語学者として、「共通語としての英語=ELF」を専門とする。