2.プーチン大統領の誤算

 プーチン氏は、ウクライナへの侵攻前に、72時間でキーウを占領できると考えていた。

 しかし、ウクライナ軍の反撃により、首都キーウや北部チェルニヒウから撤退することになった。

 なぜか、そこにはプーチン氏の3つの誤算があった。

(1)誤算1 ウクライナ軍を過小評価

 プーチン大統領は、政治的に混乱し、経済的に破綻しているウクライナを「失敗国家」と見下していた。

 また、2014年クリミア併合の際、ウクライナ軍部隊が全く無抵抗でクリミアの親露派に降伏したことなどから、軍事大国ロシアの部隊が攻め込めば、首都キーウなどの「無血開城」も可能だと見込んでいた。

 しかし、NATOはロシアが一方的にウクライナ南部のクリミアを併合した2014年以降、ウクライナに対する支援を強化してきた。

 ウクライナ軍に対して訓練や資金面の支援を行ったり、一部の加盟国が兵器を供与したりして、ウクライナが自衛する能力を高めてきた。

 このため、ロシア軍はウクライナへの軍事侵攻当初、予想外に苦戦した。

 米国防総省高官の分析によれば、2022年2月24日にウクライナへの軍事侵攻を始めたロシア軍は、ロシア軍が開戦からわずか6週間後の4月6日にはウクライナの首都キーウ周辺から完全に撤退した。

 また、再配置の可能性に備えて装備品の補給活動を行いつつ、北部チェルニヒウからも完全に退去した。

例証1

 オレクシー・レズニコフ ウクライナ国防相は、次のように語っている。

「72時間でロシアはキーウを占領できると考えていた。彼らは侵攻開始12時間以内に大統領府周辺を制圧するよう指示されていた。まさにいま、私たちがいるこの場所だ」

(出典:NHKスペシャル ウクライナ大統領府軍事侵攻・緊迫の72時間)

例証2

 プーチン氏がウクライナ侵攻の開始を宣言してから2日後の2月26日、国営のロシア通信は、「ロシアと新たな世界の到来」と題した論説記事を配信した。

「ウクライナはロシアに戻ってきた」「反ロシアのウクライナは存在しない」などと、まるで戦勝を祝うような内容だった。

 記事はすぐに削除されてしまった。

 これは、プーチン政権には侵攻開始から48 時間で、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領率いる親米欧政権を崩壊させる計画があったことを示唆している。

(出典:読売新聞ウクライナ情勢2022年3月3日)