現在の米国の戦力計画基準

ウィン・ホールド基準

 いずれにしても、米国の主要な脅威対象地域・国は、東アジアの中国と北朝鮮、欧州のロシア、そして中東のイランの3地域・4か国である。

 その中で、第1次トランプ政権(2017.1~2021.1)では、中国との「大国間競争」「戦略的競争」を最大の課題とした。

 次のバイデン政権(2021.1~2025.1)も、基本的にその考えを踏襲してきた。

 その方針に沿って、現在の米国の戦力計画は、「ウィン・ホールド基準(win-hold standard)」と呼ばれる基準を採用している。

 すなわち、第1の主要地域紛争(MRC:Major Regional Contingency)を戦って勝利する能力と、第2のMRCを阻止(holding action)あるいは抑止(deter)できる能力を保持するというものである。

 そして、第1のMRCで勝利した後、そこから部隊を再配置し、すでに第2のMRCに関与している部隊を増強してこれに対処するとしている。

 大統領選挙期間中からドナルド・トランプ氏は、ウクライナ戦争を早期終結させるとの決意を述べていた。

 その背景には、米国が最大かつ真の脅威とする中国への対処に優先的に注力する必要があるとの認識と、欧州は極力NATO(北大西洋条約機構)欧州(30か国)で守るべきであるとの考えを踏まえたものと見られる。

 しかし今、「悪の枢軸」と称される中国、ロシア、イラン、北朝鮮4か国の連携・策動が公然たる事実となった。

 それに伴い、紛争が世界戦争へ拡大するリスクと可能性に関する懸念を払拭することはできず、その事態にどのように対処するかの再考を迫られているのも否定できない現実である。