
暫定措置水域に大規模構造物を無断設置
朝鮮日報(2025年1月23日付)は、中国が最近、黄海の中韓「暫定措置水域(PMZ)」に無断で大規模構造物を設置したとの記事を掲載した。
中国と韓国は、黄海における両国の排他的経済水域(EEZ)が重なっている。
国連海洋法条約(UNCLOS)によれば、領海の外側に、領海の基線から200海里を超えない範囲内でEEZの設定が認められているが、中韓の主張水域は7.3万平方キロほど重複する。
中国が大陸棚の自然延長と衡平原則を、韓国が中間線の原則をそれぞれ主張し、両国の主張が異なることから、境界線が確定していない。
そのため、境界線の確定を留保して暫定措置水域を設け、この水域では漁業に関係のないあらゆる施設の設置や地下資源の開発などを禁じている。
その外交的に極めて敏感な水域に2024年12月、中国が直径50メートル、高さ50メートル以上の大規模な鉄骨構造物(移動式)を1基設置した事実を韓国の情報当局が把握したという。
暫定措置水域は、2001年に「中華人民共和国政府と大韓民国政府との漁業に関する協定」によって設けられたが、それを巡っては、2005年頃から中韓の対立が続いてきた。
韓国は2005年、同水域で石油試掘を試みたが中国の反発で中断し、逆に2008年、中国が石油試掘を試み、韓国の反発で中断した。
2022年4月には、中国がコンクリート製の構造物を無断設置して韓国政府が反発したが、中国は漁業補助施設と説明して言い逃れた。
さらに2024年4月から5月にかけ、中国が構造物2基を設置し、これを発見した韓国政府は強く抗議した。
その後動きを止めていた中国ではあるが、今般の構造物設置の再開に至ったのは、尹錫悦大統領の戒厳令布告に伴う韓国の政治的混乱に乗じたものと指摘されている。
力の空白を衝くのは中国の常套手段だ。
また、2022年以降、韓国の制止にもかかわらず、中国がなし崩し的に構造物を設置し、徐々に浸食していく行動は、同国が南シナ海などで行った、いわゆる「サラミスライス戦術」や「キャベツ戦術」といったハイブリッド戦の延長と見ることができよう。
韓国政府は、中国がこの水域に計12基の構造物を設置する計画を持っていることを把握している模様である。
そのまま構造物の増加を許せば、中国が同水域を自国のものと主張する根拠を与え、結局、既成事実化してしまうのは容易に察しが付こう。
今、韓国の主権は、日本や台湾、フィリピンなどと同じように脅かされている。