ポーランド観光相が不買運動を呼びかけ

 ドイツ国民でもないマスク氏が1月25日、独総選挙に向けたAfDの決起集会で、ドイツ国民のナチスによる虐殺行為などへの反省を自虐史観であるかのように語った数日後、ナチスにより数百万もの人たちが犠牲となったポーランドでは、閣僚がテスラ不買を呼びかけている。ポーランドのスワヴォミル・ニトラス観光相は同国メディアの取材に「分別のあるポーランド人がテスラを購入し続ける正当性はない。真剣、かつ強力な消費者ボイコットが必要だ」と述べた。

 消費者によるテスラ忌避の潮流に、うまく乗ろうと試みるライバル社も現れた。最近の報道によると、スウェーデンのEVメーカー、ポールスターCEOのミヒャエル・ローシェラー氏は、マスク氏に幻滅したテスラオーナーをターゲットにするよう営業担当者に指示したとしている。ローシェラー氏もドイツ国籍である。

 英フィナンシャル・タイムズ紙によると、ウォール街は今年のテスラの販売台数の伸びがマスク氏の予測よりも減速すると予測している。欧州自動車業界団体(ACEA)の数値を引用し、2024年の欧州でのテスラの販売台数は、前年比13%減少したと伝えている。様々な要因がある中、やはりマスク氏のトランプ氏支持や独英伊への政治介入も一部の潜在的な顧客を遠ざけていると指摘した。

 テスラのブランド力も急速に低下しているとの調査結果も報じられている。英ブランド評価コンサルティング会社によれば、テスラのブランド価値は2024年に26%低下したとされ、その一因がマスク氏にあると指摘している。

 心あるテスラ所有者らが安心して運転できるよう、そして自身の会社のためにも、そろそろマスク氏は先に取り上げたバンパーステッカーに書かれているように、言葉や振る舞いを顧みた方が良いのではないだろうか。

楠 佳那子(くすのき・かなこ)
フリー・テレビディレクター。東京出身、旧西ベルリン育ち。いまだに東西国境検問所「チェックポイント・チャーリー」での車両検査の記憶が残る。国際基督教大学在学中より米CNN東京支局でのインターンを経て、テレビ制作の現場に携わる。国際映像通信社・英WTN、米ABCニュース東京支局員、英国放送協会・BBC東京支局プロデューサーなどを経て、英シェフィールド大学・大学院新聞ジャーナリズム学科修了後の2006年からテレビ東京・ロンドン支局ディレクター兼レポーターとして、主に「ワールドビジネスサテライト」の企画を欧州地域などで担当。2013年からフリーに。