李明博(イ・ミョンバク)政府発足後は、ウリ法研究会所属の判事らが「不偏不党でなければならない」という倫理規定に反する行動を犯したり、大統領を批判する書き込みを堂々と掲載するなどして、社会的な議論を巻き起こした。すると、2011年、ウリ法研究会の第2代会長を務めた金命洙(キム・ミョンス)最高裁長官が初代会長を務める別の革新系判事の勉強会である「国際人権法研究会」が設立されるが、一部からは「第2のウリ研究会」とも呼ばれた。

司法府を侵食

 2017年、文在寅(ムン・ジェイン)政権の誕生によって9年ぶりに革新政権が発足すると、ウリ法研究会は「第2の全盛期」を迎える。朴槿恵(パク・クネ)前大統領の弾劾とあいまって、梁承泰(ヤン・スンテ)最高裁長官も「裁判取引疑惑」(上告裁判所の設置を目的に朴前政権と裏取引をしたなどの疑惑)で弾劾されるなど、「司法府内の積弊清算」作業が行われた。この時期に、80人余りのエリート裁判官が一度に辞職してしまう未曽有の事態が起きた。

文在寅大統領は、「ウリ法研究会」の第2代会長で「国際人権法研究会」初代会長でもある金命洙氏を最高裁長官に任命した(写真:YONHAP NEWS/アフロ)
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 すると文政権の初代最高裁判長を務めた金命洙裁判官は、彼らが出ていった空席を、ウリ法研究会および国際法研究会出身者で埋め尽くした。その結果、最高裁では14人中7人、憲法裁判所では9人中5人の裁判官がウリ法研究会・国際人権法研究会出身者になるなど、司法府の政治化が進んでしまった。

 約3000人の裁判官のうち、10%に過ぎないウリ法研究会・国際人権法研究会出身の“革新裁判官”が司法府最高位層の過半数を掌握している状況は、文在寅・司法府の左傾化の象徴とされ、今も批判の対象になっている。

 尹錫悦大統領の弾劾審判を進めている憲法裁には、現在8人の裁判官(現在は1人が空席)のうち3人が同研究会出身だ(残り5人のうち2人が保守系、3人が中道)。そして「所長代行」を務めながら弾劾審判を主導している文炯培(ムン・ヒョンベ)裁判官は、共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表と司法研究院の同期で親しい間柄として知られている。

 与党「国民の力」は文裁判官が李在明代表の公職選挙法違反事件の一審有罪判決に対して「納得いかない」と周辺に話していたと主張した。また、過去に自身のSNSで政治的に偏向した投稿を数多く乗せたとも指摘している。