文科省を喜ばせる大学が続出する

飯田:税金財源で大学が運営されるわけですから、その使い道のチェックが必要になる。さらに、大学は政府や文科省による厳密な管理・監督のもとで運営されることになるわけです。

 例えば、経済学部の授業時間や配分、課外学習の割合などのガイドラインを文科省が作成し、大学はそれらを守っているか、常にチェックしていく体制が不可欠になるでしょう。そうでなければ、先ほどお話ししたような不適切な施策を打つ大学もでてくるからです。

 すると、これまで伝統的に教育・研究の自由を守ってきた国立大や有名私大まで「ガイドライン」を死守しなければならなくなるのです。現在の私大向けの代表的な助成金である、私学助成の収入に占める割合は1割程度です。都市部の大手私大では5%未満のところも少なくありません。

 運営費の多くを授業料で賄っているからこそ、各大学がカリキュラムから講義内容までそれぞれが考える多様な研究・教育を展開できているのです。

 助成金の割合が上がるほど「学生にとって魅力的な大学をつくる」ことよりも、「監督官庁をいかに喜ばせるか」が大学運営の至上命題になってしまいます。

 実際、国や自治体の助成金が収入の中心になると官僚や県庁OBに逆らえない。そうした大学では公務員のOBが大量に天下っていて、助成金を多く獲得するノウハウが共有されています。有り体に言えば「学生の能力の向上」は二の次、という大学も少なくないのです。

──大学無償化は、少子化で学生数を確保できない大学にとって「都合が良い政策」だということでしょうか。