貸与型奨学金は合理的

飯田:大学進学の収益率(編集部注:いわば投資における利回り)は7%程度とする推計が多い*1。その意味で教育ローンを借り入れて後に返済するというファイナンスは合理的です。給付型に比べてはるかに多くの学生が利用することが出来る点も魅力的でしょう。貸与型奨学金の利子を低く抑える、あるいは現在の制度で言えば、JASSO(日本学生支援機構)の貸与型奨学金の無利子枠(第1種) の対象拡大などが求められるでしょう。

 一方で、私は公的な給付型奨学金拡大の効果については疑問です。画一的な審査基準にならざるを得ないため、明らかな困窮状況にある家計に対象を限定せざるを得ないでしょう。

 より重要なのは、大学独自の奨学金です。海外では一般的な手法ですが、各大学がそれぞれ独自の基準、それゆえに多様な基準で授業料免除や給付奨学金を支給すれば良い。大学進学に躊躇(ちゅうちょ)する家計の理由はさまざまです。必要な支援の額もまちまち。だからこそ大学ごとに異なる奨学制度を整備すべきでしょう。

貸与型奨学金は実は合理的(写真:umaruchan4678/Shutterstock.com)

 その実現にあたっては各大学に対して「入学者○○%に大学独自の奨学金を貸与・給付する、という枠を作るように」といった規制を適用するとともに、対応した運営交付金や助成金を支給するという間接的な方法にとどめるべきです。あとは大学が取りたい学生を考え、独自の奨学金制度を用意すれば良い。 そのことで大学の魅力も高まりますし、学生の学ぶ意欲も担保できるのではないでしょうか。

 大学無償化の問題点や大学独自奨学金の論点については私のnote「大学を無償化してはいけない」でもう少し詳しく説明しています。興味を持たれた方はご一読いただければと存じます。

*1教育の社会経済的効果をめぐる研究の展開、濱中・日下田(2017)