盟友に「おねだり」しまくったマルクス

 生き延びるためには「おねだり」も重要だ。これは、カネがなければカネがあるところからもってくればいいという生存戦略だ。このおねだりを巧みに使ったのが、歴史に残る大経済学者のカール・マルクスだ。

 マルクスといえば盟友としてフリードリヒ・エンゲルスが知られるが、彼らは学術的につながっていただけではない。実はマルクスの生活はエンゲルスからの仕送りで成り立っていた。

 と聞くと、「革命に燃えるマルクスをエンゲルスが支えていた」と思うかもしれないが、マルクスは高級ワインを嗜み、バカンスに出かけ、金が尽きれば「もう少し送って」とエンゲルスに手紙を書いた。マルクスの家族はエンゲルスを「小切手おじさん」と呼んでいた。もはやパパ活だ。それどころか、マルクスは原稿執筆の依頼すら面倒になるとエンゲルスに「丸投げ」することもあったという。

マルクス(後列左)と彼の娘たち。前列左より長女イエニー、四女エリノア、次女ローラ。後列右がマルクスの盟友エンゲルス。マルクスの一家は彼を「小切手おじさん」と呼んでいたという(写真:World History Archive/ニューズコム/共同通信イメージズ)
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 マルクスのふるまいは、一見、「ひどい話」で片付けることもできるが、「人間は本当に理解してくれる人が一人でもいれば生きていける」という普遍的な真理も見え隠れする。現代流に言えば、マルクスは良質な「人的ネットワーク」の重要性を知っていたのだろう。

ベルリン大聖堂を背景に立つカール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスの銅像(写真:Alberto Pezzali/NurPhoto/共同通信イメージズ )
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