イーロン・マスクの母は中国で人気のインフルエンサー
いずれにしろ、トランプは当選前になされた多くの予想を裏切って、かなり中国に譲歩する姿勢をみせて、習近平を交渉の場に誘い出そうとしている。この変化の要因が、イーロン・マスクではないか、という見方がある。
イーロン・マスクが大の親中派であることは疑う余地がない。彼の保有する電気自動車のテスラ社にとって中国市場は米国市場につぐ第2の規模で、その売り上げの3分の1を支えている。李強・現首相と関係が深く、李強が上海市書記時代に、それまで合弁の形でしか市場参入を許されていなかった自動車産業において、テスラは独資で上海工場を造った。

テスラは中国政府の調達リストに入るほど優遇され、事実上の国有企業ともいえる扱いだ。さらにマスクの母親は、ネットインフルエンサーとして中国で人気が高く、講演やモデルの仕事で中国に入り浸っている。
またマスクは台湾に関しては、中国の一部と発言しており、スペースX事業、スターリンクの進出も台湾は避けられている。マスクはTikTok禁止法にずっと反対し、一時、マスクがTikTokを買収するのではないか、あるいはXの中国進出とバーターでTikTokの米国存続という取引が落としどころではないか、などといった噂も出ていた。
21日の米国AIインフラ計画についての記者会見でトランプは、この件について「もし彼(マスク)が買収したいなら、私は同意する。(オラクルの)ラリーに買収してほしいとも思う」と発言。ちなみにその場にいたラリー・エリソンは「大統領、それは悪くないディールですね」と冗談めかして答えていたという。
こういう状況を踏まえて今のトランプの出方をみると、米中関係の行方を左右する最大のキーマンはイーロン・マスクかもしれない。