マスメディアで喧伝されるような、目先の「大転換」にとらわれてはならない。より長期的なスパンのもとにアメリカの外交政策を考えるべきである。アメリカの大戦略は、大統領が変わったとしても、それほど変わらないのだ。

日本、韓国が行うべきこととは
とはいえ、これはあくまで外交政策に絞った議論である。WHO(世界保健機構)やパリ協定からの離脱は、国際協調的な姿勢からの撤退を示しているし、カナダ・メキシコへの25%の関税方針は両国にとっては大きな影響がある。アメリカ国内でも何らかの混乱が起きるかもしれない。
ただし、日本は、これらの動きはひとまず静観しておけばよいと思う。中国との競争に打ち勝つつもりのトランプ大統領が日本を軽視することはないはずだ。
韓国にとっても同様だ。北朝鮮とのディール(取引)を目指す過程で、北朝鮮による一定程度の核保有を認める可能性はある。これは短期的にはハレーションを起こすだろうが、北朝鮮の核開発をこれまで誰も止めることができなかったのもまた事実である。さらに、北朝鮮とのディールを目指すのであれば、韓国との同盟関係はやはり重要になる。
「北朝鮮の核兵器は何が何でも認めない」という立場もあり得るが、中国とロシアはすでに核兵器を持っているのだし、冷戦期はそちらのほうが大きな問題であった。今、中国とロシアから核兵器が飛んでくると考える人はそう多くない。
だからといって北朝鮮の核兵器を軽視してはならないが、日本と韓国はアメリカという世界最大の核兵器保有国との確固とした同盟関係にある。両国は強固な「核の傘」に守られているのである。
時には対話を織り交ぜながら、中国や北朝鮮の軍事的な挑発を抑止し、同盟国と協力して自国の防衛を粛々と固めること。これが日本と韓国、アメリカの基本的な安全保障戦略である。トランプ大統領のレトリックに惑わされずに、アメリカと共有している戦略を今一度確認しておくべきであろう。