王貞治「中にはへそ曲がりもいるんだ」
一方で、現役時代のイチロー氏の取材に対する緊張感は、野球記者の間では有名だった。乏しい知識を前提とした質問に答えることはなく、取材する記者にも「プロ」であることを厳しく求めた。

シアトルは“イチロー・ムラ”とも呼ばれ、いちげんの記者が質問できる雰囲気はなかった。同時期にヤンキースでプレーした松井秀喜氏が、番記者とフレンドリーな関係を築くのとは対照的だった。
日本の野球殿堂の投票資格は野球取材15年以上の記者で、投票用紙には最大7人まで記入できる。競技者表彰のプレーヤー部門の対象は、メジャーと同じく引退から5年を経過したプロ選手が対象で、日本は15年間の有資格があり、得票率が3%未満の場合には次年度以降の候補者から外れる。
イチロー氏が、日本の野球殿堂で満票にならなかったことが発表されると、取材実績の豊富な複数の記者が、過去の取材で生じた軋轢(あつれき)による「感情論」が潜む可能性を指摘した署名記事を掲載した。
もちろん、日本の殿堂に関しては、日本時代の通算1278安打のみを評価の対象とし、投票を見送った記者がいる可能性も否定できない。投票に関してはメジャーの記録をどう判断するかの規定はなく、当事者に判断を聞く以外に根拠はわからない。
ただ、ソフトバンクの王貞治球団会長は「ボールとバットの芯を結ぶ天才。人間業ではない」と称え、満票に届かなかったことには「中にはへそ曲がりもいるんだ」と皮肉を込めた。