同社は2019年からインターネット衛星ネットワークの計画「Project Kuiper」を進めてきた。プロジェクトに総額約100億ドル(約1兆5800億円)を投じる計画で、地球上のどこでも利用できる高速ブロードバンド接続を大規模に展開しようとしている(ロイター通信の記事)。
地球低軌道衛星で低遅延通信
アマゾンは既に、3236基の衛星を高度1000キロメートル以下の地球低軌道(low Earth orbit、LEO)に配備する許可を米連邦通信委員会(FCC)から得ている。
一般的な通信衛星や気象観測・放送衛星は、高度約3万6000キロメートルを周回する地球静止軌道(geostationary Earth orbit、GEO)衛星である。これに対しアマゾンや、イーロン・マスク氏率いる米スペースXのLEO衛星は、GEO衛星よりもはるかに低い高度で周回する。これにより低遅延通信を実現できるが、その一方で、LEO衛星はカバー範囲が狭く、広範囲にサービスを提供するには多数の衛星による連携(衛星コンステレーション)が必要である。
アマゾンは2023年10月に、同社初の試験衛星2基を載せた、米ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(United Launch Alliance、ULA)の大型ロケット「Atlas(アトラス)V」を打ち上げ、同年11月にその初期の試験通信に成功したと発表した。
だが、アマゾンのKuiperにはまだ実績がなく、今後打ち上げペースを速める必要があると指摘されている。対照的に、スペースXの衛星通信サービス「Starlink(スターリンク)」には十分な商用実績がある。Starlinkは既に軌道上に約6000基以上を展開しており、世界100超の国・地域で計約400万人の利用者がいるとされる。
衛星通信サービスを巡っては先ごろ、台湾がKuiperの導入を検討しているとFTや英ロイター通信などが報じた。FTによると、台湾当局は中国による軍事侵攻のリスクが高まっていると懸念し、地域強靱(きょうじん)化策の一環として、衛星通信の導入を決めた。たとえ海底ケーブルが切断されても、携帯電話やインターネットシステムを正常に稼働できるようにする狙いがあるという。