野党議員が率先して陰謀論を流布

 代表的なのが戒厳軍に所属する「ブラック要員」が事故の背後にいるという説だ。この陰謀論は、元国情院第2次長出身の朴善源(パク・ソンウォン)共に民主党議員の一方的な主張を根拠にしている。

 朴議員は最近出演したラジオ番組で、非常戒厳と関連して「戒厳軍に動員された国軍情報司令部所属の『ブラック要員』(身分を隠して活動する軍情報要員)のうち、まだ復帰をしていない人がいる。ブラック要員の任務は大韓民国の混乱と関連があると思う。今は(政治家の)射殺はできないが、与えられた任務の中には大韓民国と韓米関係に悪影響を与えかねないものがあるのではないかと思う」と主張した。

 同党の李廣熙(イ・グァンヒ)議員も政治系YouTubeに出演し、「戒厳令解除後も、ブラック要員たちが清州(チョンジュ)空港やTHAAD基地、大邱(テグ)空港などで騒ぎを起こすために、C4爆弾を持って待機中だという情報提供を受けた」と、信じがたい話をした。

 ネットユーザーたちがこの主張に同調し、「金龍顯(元国防部長官)がメッセージを流しブラック要員が事故を起こしたようだ」「空港ごとにブラック要員が潜伏しているというのだから、このような疑いには根拠がある」「済州航空は内乱指示を受けたブラック要員が爆破および騒擾事態を試みた空港によく入港した旅客機」等というコメントを付けて陰謀論を展開している。

「シャーマンの狂信者が国家を掌握して途方もない航空機事故が起きた」と主張するネットユーザーもいれば、北朝鮮との関連性を疑う人々もいる。

 これはまるで、朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾当時に飛び交った、「セウォル号事故はパク・テミン(崔順実氏の父親)のための人身供養だ」「崔順実は巫女で大統領府でよく厄払い儀式を行っていた」などといった陰謀論を思い起こさせる。

 当時も同じく、共に民主党の李在明城南市長(当時)などの野党の国会議員が公然と陰謀論を提起し、朝鮮・中央・東亜などの主要メディアがこれを何の批判もなしに引用報道し、それがあたかも事実のように国民を誤解させた。朴大統領弾劾に対する国民世論を作るのにこのようなフェイクニュースが大きな役割を果たしたのだ。

 これらのニュースは後日、「フェイク」であることが判明し、メディア各社もその旨を報道したが、今現在も、韓国人はもちろん日本人でさえ事実だと信じこんでいる人がいる。

 国家権力の麻痺と凄惨な大事故によって混乱した状況が続く中でも、共に民主党は先頭に立って国民の不安に油を注いでいるのが今の韓国社会だ。彼らにとっては、今回の悲劇的な事故も政敵を攻撃する材料にしか見えないのであろうか。