心配のあまり舞台袖で泣き出した撮影者
髙部:渡邊さんって、実はけっこう泣き虫なんです。私をインタビューしているのに、自分が泣き出してしまうことも何度かありました。
2024年1月の新春公演「白鳥の湖」のときの渡邊さんの涙は忘れられません。本番までに怪我もあり、ダンサーの精神的な苦悩もあり。そういう経過を撮っていたので、渡邊さんもいろいろ心配だったのだと思います。
1公演目が終わった後、舞台袖で私にインタビューをしているときに突然、渡邊さんが泣き出したんです。初めは慰めていたのですが、なかなか泣き止まずに、ついには私も泣いてしまいました。
渡邊さんの会社の社長さんに聞いた話ですが、本番前日に渡邊さんはダンサーのことをすごく気にかけてくれていたようです。「大丈夫かな」「大丈夫かな」って何度も言っていたと後から社長さんが教えてくれました。
YouTubeの動画を撮る以上に、みんなの心配をしてくれて、本当にいい人だな、と思いました。
それに、渡邊さんのYouTubeをきっかけに、谷桃子バレエ団の公演を観に来てくれる人が増えたのは事実です。本当に感謝しています。運営側が渡邊さんに任せようと決めたことも英断だったと思います。
──YouTubeの中で渡邊さんが「もっとお金を作る努力をしましょう」と言って、髙部先生が「努力をしているけれども踊りに集中したい」と涙ぐんだ動画がとても印象に残っています。涙ぐんだところで動画が終わっていましたが、あの後、何があったのですか。
渡邊:あの話は、本当にあそこで終わりました。ただ、その後で動画を出すか出さないかという話がありました。
髙部:動画を出さないでほしいという話は私から切り出しました。芸術監督という立場で人前で泣いてしまったことが嫌で仕方なかったんです。
私はそれまで、渡邊さんに対してあれは映さないでください、公開しないでくださいというお願いは一切してきませんでした。初めて、渡邊さんにストップをかけました。
──渡邊さんは、どのようにして髙部先生を説き伏せたのですか。