経団連どころではない有力企業の経営者たち
かつては、前述の稲山氏ではないが、「われこそが日本経済を支えている」と考えている経営者がたくさんいた。そうした人たちが経済団体の要職に就いていた。しかし、今の経営者は、時代の変化に対応するのに忙しく、さらにはそれぞれの企業が課題を抱えていて財界活動をする余裕がない。
今回も、橋本英二・日本製鉄会長や、澤田純・NTT会長などの有力候補がいたが、日鉄はUSスチール買収案件でそれどころではなく、NTTもNTT法の改正が頓挫したことで、戦略の見直しを迫られている。
本来であれば、日本一企業のトヨタ自動車・豊田章男氏が就任すればいいのだが、豊田氏も100年に一度の変革への対応に精いっぱいということもあり、これまでも経団連副会長の打診をことごとく断ってきた。会長職についても言わずもがなだ。
魅力不足についてだが、経団連会長になれば海外ミッションにも同行しなければならないなど、時間も費用も取られてしまう。それでいて、見返りはそれほど多くない。会長になったからといって勲章をもらえる以外のうまみをあまり感じないという経営者が増えるのも仕方がない。
だからこそ、これまで選ばれなかった企業から人選するしかない。その結果が21世紀に入ってからの会長であり、今回の筒井氏だ。
過去にも経団連の地盤沈下は言われ続けてきた。そして今回の人事は、その決定打になるかもしれない。あるいは異例ずくめの筒井氏が、前例にとらわれない活動で、起死回生のホームランを放つのか──。後者に期待したいところだが、その可能性は小さい。