タブーを破った歴代経団連会長の経歴
それ以外にも不文律はいくつもあった。例えば、会長は財閥以外から出すというのもそのひとつ。経団連発足時、GHQの指令により戦前からの財閥は解体された。それを受け、経団連会長も、財閥からは選ばれてこなかった。複数の会長を送り出した東芝やトヨタ自動車はともに三井系だが、それでも三菱○○、三井○○という企業トップが選ばれることはなかった。
さらには、経団連会長は現役の経団連副会長から選ばれる、あるいは母体企業で現在も会長もしくは社長に就いていることが条件、なども不文律の一種だ。21世紀を迎えるまでは、この不文律がほぼ忠実に守られてきた。
ところが最近の経団連会長人事は、不文律に縛られなくなってきた。
皮切りは2006年のキヤノンの御手洗冨士夫氏の会長就任(経団連会長就任同日にキヤノン社長から会長に就任)だった。キヤノンは日本を代表する製造業の1社ではあるが、カメラやプリンターなどの精密機器メーカーで、厳密には重厚長大産業ではない。
御手洗氏の後任、米倉弘昌氏もタブーを破った。米倉氏の肩書は住友化学会長。ついに財閥名を社名に冠する企業から経団連会長が誕生した。現会長の十倉氏もまた住友化学の会長だ。
米倉氏にはもう一つの「初」がある。前述のように、過去の経団連会長は、いずれも副会長から選ばれてきた。ところが米倉氏はいったん副会長を務めた後、評議員会議長になっていた。ここから選ばれることは初めてのことだった。
このように、最近の経団連会長人事は従来タブーとされていたことを次々と破ってきた。
そして極め付きは今度の筒井次期会長だ。その異例さを、3つの観点から論じてみたい。