コロナ禍よりも深刻な消費低迷

 武漢のショッピングモールがシャッター街になっている様子の写真がアップされていたり、「この1年でテナント料が30万元から3万元に値下がった」といった書き込みが話題になったりしている。ちなみに、こうしたテナント料の爆下がり現象は香港でも起きているようだ。

 新型コロナ流行時も個人経営店が軒並みつぶれテナント料暴落現象が起きていたが、2024年の北京、上海、広州、深圳、重慶のテナント料平均は2021年よりもそれぞれ10.3%、24.1%、11.5%、16.2%、38.3%下がっている(万得資訊)。

 もちろん消費の中心が店舗からオンラインに変わったということもある。それでも、中国のネット世論は、これは今の若者の消費能力、あるいは消費意欲の激減を反映しているとみている。

 景気が社会の気分に大きく影響を受けるというなら、経済回復の最大の障害は、中国社会を覆う抑圧されたムードだ。そしてそのムードを作り出しているのが、習近平政権政治であり、中国の経済問題とは、すなわち政治体制の問題であるとしかいえない。

福島 香織(ふくしま・かおり):ジャーナリスト
大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002~08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。おもに中国の政治経済社会をテーマに取材。主な著書に『なぜ中国は台湾を併合できないのか』(PHP研究所、2023)、『習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウン』(かや書房、2023)など。