デフレ傾向で「適度な緩和」

 すでに今年、超長期特別国債1兆元分が発行され、うち7000万元が両重(国家重大戦略、重点領域安全建設)、3000万元が両新(企業設備一新、消費財の新旧買い替え)方面に投じられる手配が指示されている。地方政府特別債の新規発行額は3.9兆元。多くの体制内エコノミストたちの予測では来年の超長期特別国債は1.5兆元から2兆元、地方特別国債枠は4.5兆元になると見込まれている。

 ただ、こうした今の中国経済の構造で、大型財政出動がカンフル剤として効くかどうかは疑問の声が多い。2008年のリーマンショック時の4兆元の財政出動は、不動産市場やインフラ建設市場という成長期待のある受け皿産業があった。だが、今の中国は、不動産も在庫があまり、新幹線や地下鉄などのインフラ建設は飽和状態で、経済の新たな動力産業が見いだせてない。

(写真:Andre M Chang/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)

 金融政策については「適度な緩和」という表現が登場した。2011年以来のトーンとはあきらかに変化してきており、来年にどのような金融政策が実施されるかに市場関係者は注目している。適時に基準金利を引き下げ、流動性を十分に維持し、社会融資規模とマネーサプライの増加を経済成長のスピードに合わせ、価格水準が目標値になるようにするとしている。

 人民元を合理的なレートで安定させ、中央銀行のマクロコントロール、金融安定機能を開拓し、金融ツールを創造して金融市場を安定させる、としている。

 注目すべきは、社会への融資規模とマネーサプライ、経済成長、物価の全体的な水準を同じ成長スピードにさせることが言及されたことだ。この表現は2023年の中央経済工作会議にも出ている。これは物価に対する金融政策の重要性を反映した表現とみられており、物価抑制が依然として中国共産党にとって大きな関心であるということだ。

不動産市場は低迷が続いている(写真:Cao Liancong/CFoto/共同通信イメージズ)

 金融システム全体のリスクを把握し安定を図るマクロプルーデンスに関しては、中央銀行がマクロプルーデンス政策ガイドライン(試行版)をすでに発表している。潘功勝・人民銀行総裁が今年の金融フォーラムで、金融リスクを観測、予防、予警するメカニズム、枠組みを確立していくことを言明している。

 金融市場の安定化のために、人民銀行は、株式の買い戻しと保有株の借り換え、証券・資金・保険会社スワップ・ファシリティ(SFISF)オペを導入したが、その実施効果はまだ見えていない。

 おそらく来年は、マクロ政策も焦点を消費拡大に向けられ、人民の消費金融や消費環境の整備に注力されるだろう。娯楽や旅行、サービス産業への投資が支援されるかもしれない。

「両新」の一つである消費財の買い替え促進政策の中には、電気自動車の買い替え支援なども引き続き行われ、電気自動車の中古取引の利便性を高めるような政策が期待されている。