消費の拡大はスローガンばかり

 消費拡大のためには、民営経済促進法実施、企業ルールに関する法執行アクションを展開、全国統一大市場建設の指導を制定、プラットフォーム経済の健康発展を促進、包括的な税制改革、資本市場投融資総合改革の深化などのキーワードが躍った。

 だが、それをどのように実行するかはあいまいなままだった。中央政府は退職者の基本養老金の適度な引き上げ、都市農村の住民基礎養老金の引き上げ、都市農村の医療保険の政府補助基準引き上げなどについては具体的に地方政府に対して要請している。だが、若者の個人消費を刺激するためにどうするかについての見通しはあまり出ていない。

中国BYDの電気自動車(EV)(写真:共同通信社)

 中国経済にとって来年の最大の懸念は米トランプ政権の関税引き上げが中国経済にどれほどのインパクトを与えるかだ。一部エコノミストは、中国の景気刺激策がうまくいけば、GDP成長4.5%くらいは維持できるという甘い予測をする人もいる。

 しかし、不動産市場、社会福祉市場の回復は今のところ見込みがたっておらず、消費の拡大も、スローガンばかりが大きいが、実際に庶民に消費意欲の向上が見えていない。本質は大衆の所得が圧迫されていることだ。習近平政権が目下進めている増税政策や、いわゆる統制強化による罰金の増額などが、声高に打ち出す景気刺激策のムードを相殺している。

 中央経済工作会議前に、付鵬や高善文ら中国の著名なエコノミストたちが、中国経済の問題について忌憚なく指摘し警告する講演を行っていた。だが、彼らの発言が引用されたSNSやセルフメディアの記事はことごとく削除され、中国経済の問題点を指摘するエコノミストの発言すら、「国家安全上の問題」として規制、取り締まりの対象になることが明らかになった。