ユダヤ人のための名画『最後の晩餐』
こういうことから、このダ・ヴィンチの『最後の晩餐』の絵は、実はユダヤ人達の「パスオーバー」のセイダーの場面を描いたといわれているのである。
したがって、我々ユダヤ人はこのダ・ヴィンチの絵画を見るたびに、エジプト脱出の記憶をもう一度蘇らせ、ユダヤ人の祖先の苦労を新たにする。まさに、ユダヤ人達のための世界の名画なのである。
他にももう一つ、この絵が「パスオーバー」のセイダーだという証拠がある。それは、マッツォが全員の席の前に置かれている点である。これこそ、このダ・ヴィンチの絵がセイダーの場面だというもう一つの決定的証拠である。
よく見てもらうと、ユダは1人だけマッツォに手を伸ばして摑もうとしている。主客のキリストがまだマッツォに手を伸ばしていないのに、である。
もしこの絵が処刑前の最後の「晩餐」を描いているとすると、ユダヤ教徒だから必然的にシャバット(Sabbath:安息日)の晩餐(つまりは金曜日の夕食)となるはずである。
すると、パンはハラ(Hallah)といわれる酵母で十分大きく膨らませて焼かれたフワフワ、フカフカのパンになる。これだけの人数分だと、長さ30~40cm、幅20~30cm、高さ10cmくらいのパンになるだろう。
それが主客のキリストの前だけに置かれる。その後、シャバットの祈りのキドゥーシュ(Kiddush)がおこなわれ、主客のキリストがまずハラをもぎ取り、その次に全員に回すはずなのだが、この絵の中で、その仕草はキリストには見られない。
全員にマッツォが置かれ、ユダは早々に手を伸ばしてマッツォを取ろうとしている。これは「パスオーバー」のセイダーだったら正しい手順であり、ありうる行動だ。つまり、この絵はセイダーである。