26人の身柄交換は和平交渉の地ならし?
ゼレンスキー大統領は、絶え間ないロシア軍のインフラ攻撃で電力不足に陥り、士気が落ちるウクライナ国民を鼓舞することが最重要課題。しかも米大統領選でドナルド・トランプ前米大統領が勝利すれば今年末か来年初頭にウクライナは交渉による解決を強いられる可能性が強い。
交渉カードとしてウクライナは可能な限り領土を奪っておく必要がある。
8月1日、スパイ罪に問われ収監中だった米紙ウォールストリート・ジャーナルのエバン・ゲルシコビッチ記者ら米露など7カ国で拘束されていた計26人の身柄交換が行われた。ゼレンスキー大統領はこれを和平交渉に向けた地ならしと危機感を募らせたのかもしれない。
ウクライナの前線でロシア軍はウクライナ軍の5~10倍の死傷者を出しながら、滑空爆弾と4対1で優位に立つ砲弾でウクライナ軍の陣地を粉砕し、数で前線を突破する。ドローン(無人偵察機)はウクライナ軍の補給路を危うくしている。
ライアン氏は「ウクライナ東部の防衛ではなくロシアへの攻撃に旅団を使うことが戦略的に最も効果的な使い方であったかどうかは時間が経てば分かるだろう。戦争の勢いを変える見事な対抗策なのか、それともウクライナが抱える課題を悪化させる戦略的誤りなのか」と問いかける。
英シンクタンク、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)のマーク・ガレオッティ上級研究員も英誌スペクテイター(8月8日)に「大戦後初めて外国軍がロシアに侵攻した。またしても機敏なウクライナがロシアを出し抜いた。しかし、これは本当に重要なことなのか」と寄稿している。
「賢明な賭けであったかどうかは時間が教えてくれる。米陸軍のストライカー装甲車は絶望的な東部ドンバスの砦の防衛に有効活用できたはずだ。大胆なのか、自暴自棄なのか。この攻撃はキーウがシナリオを変える必要性を痛感していたことを明確に示している」
ウクライナ軍は欧州に天然ガスを供給する中継地点(
米国家安全保障会議(NSC)のジョン・