AIの普及にはデータセンターの拡充が必要になり、電力需要を格段に増加させる(Pete LinforthによるPixabayからの画像)
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 2020年11月、OpenAIから「ChatGPT」が発表された。

 驚くべきことに、ChatGPTは公開後わずか5日間で100万人ものユーザーを獲得し、世の中は一変した。

 ChatGPTは生成AIと呼ばれる。

 生成AIは、文字などの入力に対してテキスト、画像、または他のメディアを応答として生成する人工知能(AI)システムの一種である。

 さて、生成AI関連事業には大量の電力が必要である。

 国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)の推計では、米OpenAIのChatGPTが1回のクエリー(検索)に回答する消費電力量は2.9ワットアワーで、グーグル検索の約10倍に相当する。

 また、生成AIを動かすデータセンターでは、24時間態勢で大量のサーバーや冷却設備を動かしており、安定した電力供給が欠かせない。

 AIによる膨大な計算量を支えるために世界のデータセンターの消費電力量が急増し、2022年に約460テラワットアワーだった消費電力量が2026年に620~1050テラワットアワーに達すると推定した。

 1000テラワットアワーは日本国内の年間消費電力に匹敵する規模である(出典:日経BP日経クロステック2024年8月30日)。

 ところで、日本の電力需要の見通しはどうか。

 全国の電力需給を調整している「電力広域的運営推進機関」によると、国内の電力需要は、人口の減少や省エネの浸透などを背景に2007年度をピークに減少傾向にあった。

 ところが、2024年度からは増加に転じるとしていて、2033年度の電力需要は、現在よりおよそ4%増えて8345億キロワットアワー(834.5テラワットアワー)に上る見込みである。

 詳しくは、下図1の「日本の電力需要の見通し」を参照されたい。(出典:電力広域的運営推進機関)

図1:日本の電力需要の見通し

 一方、日本の発電電力量は、全体としては、経済成長と共に増加していたが、2000年代後半からは減少に転じている。

 1973年の石油ショック後に脱石油と電源の多様化(原子力、LNG=液化天然ガス、石炭)が進展した。

 また、2011年の福島第一原子力発電所の事故後の2012年から「再エネ買取制度」が開始され、再エネが急激に増加している。

 現在の発電電力量は10000億キロワットアワー(1000テラワットアワー=1ペタワットアワー)である。

 詳しくは、下図2の「発電電力量と発電用エネルギー投入量」(出典:経産省「2023年度エネルギー需給実績(速報)」を参照されたい。

図2:「発電電力量と発電用エネルギー投入量」

 今、日本では、国内外のIT企業によるデータセンターおよび半導体工場の新設により電力契約が急増しており、大電力消費に対応したデータセンターの増設が必要になっている。

 ところで、報道によると政府は来年策定する「第7次エネルギー基本計画」において、東日本大震災以降、原子力発電について「可能な限り依存度を低減する」としていた方針を見直し、電力需要増への対応に加え、脱炭素化と安定供給のために「原発を最大限活用する」とする方針を定めた。

「第7次エネルギー基本計画」に関する報道の詳細は後述する。

 以下、初めに生成AIのインパクトとデータセンター(DC)の市場規模について述べ、次に日本国内でのデータセンター建設ラッシュの現状について述べ、最後に世界と日本のエネルギー政策における原発回帰の現状について述べる。