米政府、対中半導体規制の強化版
これに先立つ24年12月2日、バイデン政権は先端半導体に関する中国への輸出を制限する新たな対中規制を発表した。米政府はそれまでエヌビディア製GPU(画像処理半導体)など、AI(人工知能)向け先端半導体や半導体製造装置を中国などの「懸念国」に輸出することを禁じていた。
今回は、①AI向けのHBM(広帯域メモリー)の中国への販売を制限し、②中国が利用できる半導体製造装置の範囲を狭めた。③加えて、既に中国・華為技術(ファーウェイ)などを対象としている、取引制限リスト(エンティティーリスト、EL)に中国140社を追加した。④米国製技術を使用した外国製品に対して、中国への輸出時に米政府の許可が必要になる「外国直接産品ルール(Foreign Direct Product Rule、FDPR)」の対象も拡大した。
中国の対抗措置、半導体主要材料の輸出規制強化
この対中輸出規制の強化を受け、中国は先端半導体や軍事装備品の製造に使われる主要原材料の輸出規制を強化すると発表した。また、中国の主要業界団体は、同国企業に対し米国製半導体の購入を控えるよう警告した。
今回のエヌビディアに対する独禁法調査について、米・南カリフォルニア大学の法学教授で『Chinese Antitrust Exceptionalism(中国の反トラスト例外主義)』の著者であるアンジェラ・チャン氏は「米国で最も価値の高い企業の1つを標的にすることで、中国は自国の報復能力を示し、米国のさらなる攻撃的行動の抑止を狙う」と述べている。
チャン氏によると、「それでも中国は自らの対抗措置が米中間の経済的なデカップリングをさらに進める結果となり、ブーメラン効果が生じる可能性があることを理解している」という。このため、「中国はこのような手段を限定的に使うだろう」(同)
一方、米調査会社ユーラシア・グループ社長で国際政治学者のイアン・ブレマー氏は「中国の動きは、米新政権との大規模な交渉の土台になる可能性がある」と分析する。しかし、「これはトランプ陣営が交渉に応じる場合にのみ機能し、現時点でその行方は見通せない」(同)とも指摘する。