スイスでは「核シェルター」改修へ

 2世紀以上にわたり永世中立国であるスイスは今秋、2億2000万スイスフラン(約400億円)を投じて核シェルター改修に乗り出した。1963年から続く法律により、スイスにはおよそ全人口の900万人が有事の際に利用できるシェルターがある。外国人や難民でも避難可能だ。

スイスの核シェルター内の2段ベッド(写真:ロイター/アフロ)

 公的なものも含むシェルターの数は37万に上る。スイスでは、すべての人々に核攻撃に加え、生物・化学兵器や通常兵器から身を守るための避難所に入ることが法律で保証されている。公共の避難所を利用するには、1人当たり800スイスフラン(約14万円)かかる。シェルターには、建物が倒壊した場合に備えた避難トンネルや、換気システムなども備えられている。

スイス国民保護局のYouTubeチャンネルより

 ロシアによるウクライナ侵攻が起きた2022年以降は、市民から自分に一番近いシェルターの所在地や、シェルターの状態などについて問い合わせが殺到したという。ロイター通信の取材に応じた当局関係者によれば、スイス国内だけでなく隣国のフランスからも空爆の際の使用を希望する声があったが、それについては拒否せざるを得なかったという。

スイスの核シェルター(写真:ロイター/アフロ)

 ロイターが最近取材したシェルターの中には、ドアが開かなかったり、避難用のトンネルに通じる梯子が設置されていなかったりしたものもあった。所有者はこうしたシェルターの修復のため1年の猶予が与えられる。改善されなければ公共避難所を利用し、料金を支払わなければならない。

 最近スイスとよく比較されているのが、ドイツでのシェルターの設置状況だ。スイスに比べ10倍近い人口の約8500万人を有するドイツでは、冷戦時代に2000ほどあったシェルターの多くが解体され、現存数は579とスイスよりも圧倒的に少なく、機能していないとされる。収容できる人数は48万人程度と、人口の1%にも満たない。