悪名を奇貨に立ち上げた新産業

松本:好むと好まざるにかかわらず、国内最大の津波が押し寄せる町として黒潮町の名前は知れ渡っていましたから、それを逆手にとって産業を興そうと考えたのです。

──例えば、どんなことをしたのでしょうか?

松本:一つは、黒潮町缶詰製作所の設立です。

 冒頭に申し上げた通り、南海トラフ巨大地震の被害想定を前に、住民は避難をあきらめる避難放棄に陥っていました。その状況を打破するために、防災を軸にしたまちづくりに着手しました。その一つが、防災関連産業として設立した第三セクターの缶詰製造会社です。

 現在は防災備蓄品やグルメ缶詰など20種類以上の缶詰を販売しています。東日本大震災の時にアレルギー対応に苦慮したという声を聞いていたので、すべて8大アレルゲン不使用です。

黒潮町缶詰製作所(写真:黒潮町缶詰製作所)黒潮町缶詰製作所(写真:黒潮町缶詰製作所)
美味しそうな缶詰(写真:黒潮町缶詰製作所)美味しそうな缶詰(写真:黒潮町缶詰製作所)
(写真:黒潮町缶詰製作所)

 また、直近では「鰹めし」の新商品を作るべく、クラウドファンディングを実施しています。

──「鰹めし」とは?

松本:黒潮町は鰹の一本釣りで有名です。鰹漁船は1年の大半を海で過ごす過酷な仕事です。そんな漁師が海の上で食べていたのが鰹めしです。私はクラウドファンディングには直接関わっていませんが、県内で水揚げされた鰹を使用し、同じく高知県産の生姜を炊き合わせる形で開発を進めているようです。よろしければ、ご協力をお願いします。

防災コンセプト「にげる」を世界へ!(READYFOR)

現在開発中の防災缶詰(画像:梅原デザイン事務所)現在開発中の防災缶詰(画像:梅原デザイン事務所)

 缶詰製造の他に取り組んでいるのは、防災ツーリズムです。