不透明な電池投資シナリオ

 100万台を増やす計画ながら、2027年3月期の営業利益率は6%と、24年3月期から1.2ポイントしか増えない。現状では電動車はエンジン車よりも生産コストが高いため、台数の伸びに比べて収益の伸びが低いからだ。

 こうした課題に対応するため、日産は27年度からEV5車種を一つの「ファミリー」として一括開発する次世代のモジュール生産を導入する。生産ラインを短縮化することで1台製造するのに必要な時間を20%短くできるようになるという。これにより、30年度までに1500億円の開発投資が削減でき、営業利益率は8%にまで上がる見通しだ。

 EVのキーデバイスの一つ、電池については、30年度までに135GWh(ギガワットアワー)の生産能力を確保する計画を示したが、どのような手段でいくら投資して確保するのかを明示しなかったため、具体性に欠けた面は否めない。

 特に収益源の北米において60GWhの生産能力を確保する計画は示したものの、具体的にどのように展開するのかの説明がなかった。そのため、北米における電動化戦略は本当に計画通りに進むことができるのだろうか、と筆者は受け止めた。

日産はホンダとの協業交渉を進めている(写真:共同通信社)

 他社ではホンダが韓国の電池大手LGエナジーソリューションとの合弁で米国に44億ドル(約6600億円)を投資すると発表している。トヨタ自動車も電池関連で米国に総額139億ドル(約2兆1000億円)を投資し、30年度までに30GWh以上の生産能力を確保すると公表している。

 このように電池には莫大な投資が必要となる。単純比較すると、30年度時点で日産はトヨタよりも電池の生産能力を多く持つことになる。果たして今の日産の財務状況で、こうした投資に耐えることができるのか。

 おそらく日産単独での対応は無理だろう。だから日産はホンダとEVなどでの協業に向けて交渉に入ったのではないか。交渉が成立し、日産はホンダと手を組む形で電池戦略を進めれば財務負担は減るだろう。