EV市場の鈍化で先行き不透明感が高まる

 まずは販売増に関わる地域別の戦略についてだ。100万台増のうち、米国、カナダ、メキシコ、南米地域で33万台を上積みすることを目指すが、収益源の核となる米国でどれだけ伸ばすのかは明示しなかった。米国とカナダで商品ラインアップの78%を刷新すると説明。三菱自動車との協業によりプラグインハイブリッド車(PHV)やe-POWER搭載車を新たに投入する。

 収益を支える米国市場でどれだけ増やせるかを明示しなければ、新中期経営改革の実効性が疑われる可能性が出てくる。ただ、日産側にも明確に打ち出せない事情があると見られる。

 米政府は3月20日、2027年から32年にかけて適用される自動車の新環境規制を発表。従来の規制案より二酸化炭素削減のペースを緩くした。規制値を達成するためには32年時点で新車販売に占めるEV比率の見通しを最大67%から同56%に下げ、その分PHV13%、ハイブリッド車(HEV)3%を付け足した。あくまで試算であり、EV比率が35%の場合は、PHVが36%、HEVが13%になる見通しだ。

 さらに、もし、米国大統領選でトランプ大統領が誕生すれば、産業政策が大きく変化する可能性もある。このように変動要素があるため、日産は明確な数字を打ち出せなかったのかもしれない。

 中国ではEVなどの新エネルギー車8車種を投入するなど商品ラインナップの73%を刷新し、20万台増を目指す。中国では生産能力が過剰であるため、その解消策の一つとして25年から中国で生産したEVなどを年間に10万台輸出する。中国とタイはFTA(自由貿易協定)を結んでおり、完成車が関税ゼロで輸出できるため、輸出先はタイを中心とする東南アジアなどになると見られる。

 しかし、地域別の販売計画ではタイやインドネシアなどの東南アジアにおける計画は開示しなかった。タイではEVシフトが急激に進んでおり、市場動向が見えにくいことも影響していると見られる。その他、欧州、中近東、インド、アフリカなどで30万台の増を見込む。マザー市場である国内は9万台増の計画。乗用車のラインナップを80%刷新し、5つの新型車を投入する。