新中計の実効性、ホンダとの協業がカギに

 今回の新中期経営改革とは直接関係ないが、日産は財務面にも課題を抱える。それは、昨年の資本関係見直しで、ルノーが手放した日産株約28%分の処理の問題が影響している。ルノー側の指示に応じて日産が買い取る形になっており、現在の時価総額から見て5000億円近い買戻し資金が必要になる。

 こうした資金に加え、成長のためには電動化向けの巨額投資も必要になる。日産が生き残っていくためには、一層の効率的な経営と、ルノーや三菱自動車以外にさらなる戦略的なアライアンスが必要な状況だ。

 その筆頭候補がホンダということになる。ホンダも、もはや単独で生き残れる時代ではない。両社は15日の協業に向けての交渉入りを表明後、テーマごとに6つの個別検討チームを作り、協業の詳細を詰めている。おそらく株主総会前の6月中旬までには結論が出るだろう。

 日産の新中期経営計画の具体性と実効性が乏しく見えるのは、ホンダとの協業内容の結論が出ていないことも少し影響している、と筆者は見ている。協業交渉を早くまとめ上げて新中期経営計画の精度を上げるためにも、内田社長の強いリーダーシップと覚悟が問われる局面にある。

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井上 久男(いのうえ・ひさお)ジャーナリスト
1964年生まれ。88年九州大卒業後、大手電機メーカーに入社。 92年に朝日新聞社に移り、経済記者として主に自動車や電機を担当。 2004年、朝日新聞を退社し、2005年、大阪市立大学修士課程(ベンチャー論)修了。現在はフリーの経済ジャーナリストとして自動車産業を中心とした企業取材のほか、経済安全保障の取材に力を入れている。 主な著書に『日産vs.ゴーン 支配と暗闘の20年』(文春新書)、『自動車会社が消える日』(同)、『メイド イン ジャパン驕りの代償』(NHK出版)、『中国発見えない侵略!サイバースパイが日本を破壊する』(ビジネス社)など。